リサイクルのためにあなたができることは具体的に何か?と聞かれて、すぐに答えられない人もいるのではないでしょうか。
リサイクルとは、ごみとなったものを一度資源の状態に戻し、使える部分を取り出して新しい製品を作ること。ごみを減らすための活動であり、行うのは主に専門の業者です。
しかし消費者側もリサイクルに貢献はできることはあり、何をすれば良いのか知らないままだと、無意識に“エコ活動ができていない人”になる可能性も。
この記事では、リサイクルとは何か、言葉の意味や具体例、私たちひとりひとりが取り組めることを解説します。環境や未来の暮らしについて考えられる人になるために、ぜひ最後まで読んでみてください。
リサイクルとは
リサイクル(Recycle)とは、ごみとなったものをいったん資源の状態に戻し、新たな製品を作ることを指します。
リサイクルを行うのは業者ですが、缶・びん・ペットボトルなどを分別したり、古紙や衣類を資源回収に出したりすることで、消費者側もリサイクルに協力することが可能です。
また、「家電リサイクル法」で定められた以下の4品目は、正しく処分すれば部品や材料などをリサイクルできます。
- エアコン
- テレビ(ブラウン管、液晶・プラズマ)
- 冷蔵庫・冷凍庫
- 洗濯機・衣類乾燥機
リサイクルには専用の大型施設やエネルギーが要るというデメリットもありますが、ごみとなったものを少しでも有効利用するために、必要な技術です。
日本のリサイクル率
環境省が2022年3月29日に発表した「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和2年度)について|環境省」によると、日本のリサイクル率は20%。
前年度は19.6%だったためわずかに上がっていますが、日本のリサイクル率をほかの先進国と比較すると、下から数えたほうが早いです。
日本は領土が狭く、ごみを埋め立てる土地を確保しにくいため、焼却処理の技術向上を優先してきました。
しかし焼却に頼りすぎた日本はごみのリサイクルが進んでおらず、埋め立て中心のヨーロッパ各国に比べてリサイクル率が伸び悩んでいます。
リサイクルに取り組むメリット
リサイクルに取り組むと、地球環境にどのような良い影響があるのでしょうか。
ここでは、リサイクルに取り組むメリットを解説します。
埋め立てるごみが少なくなる
リサイクルに取り組むと、焼却するしかないごみの量を減らせます。
20世紀に人々がものの大量生産・大量消費をしてきた結果、ごみがたくさん出て、限りある土地に作ったごみの埋め立て地(最終処分場)は減る一方です。
リサイクルしてごみの一部を再資源化すれば、埋め立てなければいけないごみの量が減り、埋め立て地の容量が節約できます。
焼却時の二酸化炭素排出量を減らせる
リサイクルに取り組めば、ごみを燃やしたときに排出される二酸化炭素の量を減らすことが可能です。
たとえばペットボトルの場合、いっさいリサイクルしない場合と比べると、リサイクルすれば二酸化炭素の排出量が42%減ると算定されています。
※参照:PETボトルリサイクル推進協議会
リサイクルは二酸化炭素をまったく出さない取り組みではないものの、ただごみをそのまま燃やすよりも大幅に二酸化炭素量をを削減できるのです。
天然資源を節約できる
地球にある森林資源や水資源、プラスチックの原料となる石油も、採れる量は有限です。ごみをリサイクルすれば、製品を作るための原料になる分、新しく使う天然資源の量を抑えられます。
人間が今まで無計画に使って減った資源を、これから大切に使っていくためには、リサイクルが不可欠です。
リサイクルとリデュース・リユースの違い
リサイクルは、リデュース・リユースとあわせてごみを減らすための「3R」と呼ばれています。
ここでは、3Rのうちリサイクル以外のリデュース・リユースについても意味を紹介するので、リサイクルとの違いを確認してみてください。
リデュースとは
「リデュース(Reduce)」とは、ごみの量自体を減らすための取り組みを指します。レジ袋や割り箸などをもらわずにエコバッグ・マイ箸を使ったり、一度買ったものをなるべく長く使って、簡単に捨てないようにしたりすることがリデュースです。
リサイクルはごみとなったものから使える資源を取り出すのに対し、リデュースは捨てるごみ自体を少なくするという点で違います。
リデュースについては、こちらの記事で詳しく解説しているのであわせて読んでみてください。
リユースとは
「リユース(Reuse)」とは、一度使ったものをすぐごみにせず、繰り返し利用して使うことを言います。自分で繰り返し使うのはもちろん、中古品やシェアリングシステムなど、第三者含めてひとつのものを長く使用することもリユースです。
修理やメンテナンスを行う業者や、買取ショップ、フリマアプリなどもリユースにあてはまり、加工・分解などをせずそのままの状態で再利用する点がリサイクルとは異なります。
リユースについては、こちらの記事で詳しく説明しているのでチェックしてみてください。
3Rの優先順位
3Rには取り組むべき優先順位があり、リデュース>リユース>リサイクルの順に重要視されます。
リサイクルは専門業者が化学分解・融解をするときにエネルギーを使い、二酸化炭素も排出するので3Rのなかでは優先順位が低いです。
また、リユースしたものもいつかはごみになります。埋め立て地の容量を減らさず、二酸化炭素の発生も抑えるためには、ごみ自体の量を減らすリデュースに取り組まなければならないのです。
いらないものは買わず(リデュース)、一度買ったものは大事に長く使った(リユース)うえで、それでもごみとなったものはリサイクルします。
リサイクルとSDGsとの関係
リサイクルは、世界で定められているSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の達成にも関係しています。
環境や社会を守るために決められた17個あるゴールのうち、リサイクルはとくに以下の3つと関係が深いです。
- ゴール12「つくる責任 つかう責任」:ごみとなった製品はせめてリサイクルする
- ゴール13「気候変動に具体的な対策を」:リサイクルにより焼却するごみの量を減らす
- ゴール14「海の豊かさを守ろう」:リサイクルできる包装プラスチックを活用し、プラスチックごみによる海洋汚染を防ぐ
先述しましたが、リサイクルする場合も二酸化炭素は排出されるため、リデュース・リユースにも取り組んだうえで、最終手段としてリサイクルを活用します。
「リサイクルできるから」と不要なものを買わないように注意しつつ、3Rに取り組むことがSDGsのためには大切です。
リサイクルの具体例
ここでは、リサイクルして作られた商品や、リサイクルできるように考えられた仕組みなどの具体例を紹介します。
私たちの身近なところにリサイクル製品はあるので、ぜひ知ってみてください。
リサイクルトイレットペーパー
牛乳パックや新聞紙などの古紙をリサイクルすると、トイレットペーパーに生まれ変わらせることが可能です。ごみを減らせるだけでなく、紙を作るための森林資源を節約することにもつながります。
牛乳パックのリサイクルは、1リットルサイズ6パック分=トイレットペーパー1つ分となる計算です。
出典:丸富製紙株式会社
新聞紙は、いったんドロドロの状態に溶かしてインクを取り除き、紙の原料繊維である「パルプ」に戻すことで、トイレットペーパーや段ボールなどに変えられます。
100%リサイクルペットボトル
「100%リサイクルペットボトル」とは、環境負荷の少ないPET樹脂のみで作られたペットボトルのことです。
100%リサイクルペットボトルを使用している商品には、以下のような例があります。
- コカ・コーラ(日本コカ・コーラ株式会社)
- い・ろ・は・す 天然水(日本コカ・コーラ株式会社)
- キリン 生茶(キリンビバレッジ株式会社)
- GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶(サントリーホールディングス株式会社)
- 100%リサイクルペット素材の詰替えボトル(イオントップバリュ株式会社)
日本コカ・コーラ株式会社は、100%リサイクルペットボトルの導入により二酸化炭素排出量が49%、プラスチックの年間使用量(重さ)が自動車約4,000台分削減できると発表しています。
出典:プレスセンター|日本コカ・コーラ株式会社
コンポスト
出典:LFCコンポスト
「コンポスト」とは、家庭から出た生ごみや落ち葉などを、微生物の働きを利用して堆肥(compost)にすること、あるいはコンポストのための容器を指した言葉です。
そもそも日本では昔から糞尿などを肥料にしてきましたが、近年は家庭で手軽にコンポストできる容器が作られました。コンポストをすれば、生ごみを捨てる手間が減るうえ、生ごみを入れていたごみ袋も使わずに済みます。できた堆肥は、家庭菜園やガーデニングに使えますよ。
ただし、貝類の殻など分解できないものもあるので、使う前にはコンポストできる食品・できない食品をきちんと調べることが必要です。
リサイクルのために私たちができること
リサイクルの意味や具体例を知ったうえで、私たち消費者側がリサイクルのためにできることは何かを考えましょう。
ここでは、誰でも今日からリサイクルに貢献できる行動をいくつか紹介します。
ごみを正しく分別する
業者側にリサイクルを進めてもらうには、私たち消費者がごみを出すときに正しく分別することが重要です。「これは何ごみなのだろう」と不明なものを何でも可燃ごみにせず、一度調べたり問い合わせたりすれば正しい分別が分かります。
衣類や古紙など、リサイクルしやすいものはとくにきちんと分別することを日常から心がけることが大事です。
家電4品目や小型家電は業者に引き取ってもらう
以下の家電4品目は、「家電リサイクル法」により、業者に回収してもらうことが決まりとなっています。
- エアコン
- テレビ(ブラウン管、液晶・プラズマ)
- 冷蔵庫・冷凍庫
- 洗濯機・衣類乾燥機
また、スマホ・FAX機・パソコン・ジャー炊飯器、扇風機なども、「小型家電リサイクル法」により分別回収されます。
業者が回収すれば部品をリサイクルして新しい製品に使えるため、電子機器を捨てたいときは必ず捨て方を調べましょう。
ものを買うときはエコマーク商品・リサイクル商品を選ぶ
前述した古紙から作るトイレットペーパーや、100%リサイクルペットボトルなど、ものを買うときはエコ・リサイクルに関連した商品を選ぶとよいです。
以下はリサイクルマークの一例ですが、目にしたことがあるものも多いのではないでしょうか。
リサイクルして作られたものや、捨てたあとリサイクルできるものをなるべく探して買い物をするようにできるとよいですね。
リサイクルを意識して少しでもごみを減らそう
ここまでリサイクルについて、言葉の意味や具体例、私たち消費者が取り組めることについて解説してきました。
日本のリサイクル率はまだまだ低いですが、ひとりひとりが意識ある行動をしていることで、数値はわずかに上昇しています。正しい分別を行うことはもちろん、商品を買うときにもエコなものを選ぶことが大切です。
あくまで3Rの優先順位はリデュース>リユース>リサイクルであることも忘れずに、リデュース・リユースとあわせながら、できることに取り組んでみてください。
私たちひとりひとりの心がけが、日本や地球の未来を守ります。