ガスが自由化したというのを聞いたことはありませんか。2017年から一般家庭向けの都市ガスが自由化し、対象エリアであれば、どこでもガス会社を選べるようになりました。
近年のエネルギーの高騰を受けて、ガス代に悩み、ガス会社の検討をしている人もいることでしょう。実際に会社を乗り変えることで、ガス代が安くなることもあります。
しかし社会情勢やガス料金プランをしっかり検討してから乗り換えなければ、逆にガス代が高くなってしまう可能性も。
そこで、本記事では、ガス自由化のメリットデメリットや、乗り換え方法、乗り換え時の疑問点を解説します。ガス会社を変えて損をしたということがないように、乗り換え前に正しい知識を身に付けましょう。
ガス自由化とは?
ガスの自由化とは今まで大手のガス会社、東京、大阪、東邦、西部ガスらが、ほぼ独占的に一定のエリアで供給していた都市ガス市場に、新たなガス会社が参入。消費者はあらゆる企業を比較し、ガスを購入する企業を選択できるようになった制度を意味します。
1995年からガスを大量に消費する企業に向けての自由化が進み、2017年以降家庭向けのガスも自由化されました。これにより、都市ガスが供給されているエリアでは、ガス会社が選択できるようになり、新規参入した会社も多数存在します。
電力自由化との違い
電力自由化とガス自由化の一番の違いは、新規参入企業の数です。電力は太陽光や風力など、さまざまな発電方法で電力を作ることができるため、事業の幅が広く、電気の利用者も多いことから参入企業がたくさんあります。
それに比べ、ガスは生産コストが高く、生産場所や方法が限られているうえ、利用者が電力より少ないこともあり、新規参入事業者が多くありません。
したがってガス自由化は、電力自由化より価格競争が起きづらくなっているということが現状です。
ガスの種類
ガスの自由化を受けて、ガス会社の変更を検討する前に、今一度ガスの種類について押さえておきましょう。
家庭用のガスは全部で3種類に分けることができます。それぞれの家庭や居住地域で、使用できるガスの種類が異なるので、まず自宅で使えるガスの種類を把握しましょう。
都市ガス
ガスの原料を気化させ、導管を通すことで家庭に供給されるガスのことです。導管は地中に埋められていて、供給エリアは限定されています。
つまり導管が張り巡らされているエリアのみ、都市ガスが使用できるということです。都市ガスが自分の居住地で使用できるかどうかは、一般社団法人 日本ガス協会から事業者を検索して確認ができます。
簡易ガス
主に団地やマンション等で使用されるガスです。敷地内に簡易的なガス発生装置を設置し、都市ガスと同じような導管を通して、各家庭に供給される仕組みになっています。
団地やマンションなど、多くのガスを一度に消費する場所の場合、LPガスのようなボンベでは供給が追い付きません。しかし、都市ガスは対象エリア外のため供給されない。そのような場合に使用されることが多いガスです。
LPガス(プロパンガス)
LPガスは一般的にプロパンガスと呼ばれるガスです。敷地内にガスを充填したボンベを設置し、そこからガスを使います。定期的にガス会社がボンベの補充、交換に回らなければならない仕組みです。
各エリアごとに大手のLPガス会社が存在しますが、LPガスは既に自由化されていて、原則どこのガス会社から購入してもいいことになっています。
ガスの乗り換え方法
ガスが自由化され、少しでも安いガス会社を検討し、乗り換えることになった場合、どのように乗り換え手続きをすればいいのかを解説します。
連絡をしてプランを決める際、旧ガス会社の検針票があれば、現在のガスの使用状況がわかります。それがあると、よりスムーズに手続きを進められるので準備しておきましょう。
都市ガスから都市ガス
都市ガスから都市ガスに乗り換える場合、供給されるガス自体は同じ導管を使用しているため何も変わりません。そのため、新しく利用する都市ガス会社に連絡し、乗り換えの手続きをするだけで完了です。
工事などは必要なく、切り替えのためにガスが使用できない期間も発生しないので、ガス会社の切り替えのタイミングを悩む心配はありません。
LPガスからLPガス
新しいガス会社に連絡し、契約とボンベを持ってきてもらうタイミングの確認をしましょう。そのあと旧ガス会社に連絡し、解約手続きとボンベの回収を依頼します。
ガスが使用できない期間が短くなるよう、新旧のガス会社と連絡を取り合いながら日程を調整しましょう。旧ガス会社が新ガス会社に回収の委託を行う場合もあります。
都市ガスからLPガス
都市ガスからLPガスへの乗り換え方法です。
まずプロパンガスは都市ガスと異なり、ボンベを置くスペースを確保する必要があります。設置しなければならないボンベの数を把握し、設置場所を決定しておきましょう。
そのうえで新しいガス会社に連絡し、契約をしてガスの開通日を決定します。契約が完了したら、旧ガス会社に連絡をし、解約の手続きをしたら完了です。
LPガスから都市ガス
まず自身の居住エリアが都市ガスの供給エリアか、また都市ガスの導線を引き込むことが可能か確認します。そのうえで、都市ガスを引き込む工事をしなければなりません。工事には費用が発生します。
都市ガスを引き込む工事は約1~2ヵ月で完了するので、その間に新しいガス会社との契約を進めましょう。それと同時に、旧ガス会社へ連絡して契約解除とボンベの回収依頼をしてください。
旧ガス会社の規約によっては、解約の手続きに時間がかかることもあるので、解約申込のタイミングは事前に確認しておきましょう。
ガス自由化に関するよくある質問
今まではガス会社を選択できるという発想がなく、ガス会社を選んだことがないという人も多いのではないでしょうか。そこで、ガス自由化を受けて、ガス会社の乗り換えを検討するなかで、よく疑問にあがることを解説していきます。
ガス会社を乗り換えるかどうかを決めるときの参考にしてみてください。
自由化するとガスの質は落ちる?
どこの会社から購入したとしても、ガスの質は同じなので安心してください。
都市ガスの自由化で、様々な企業がガスの販売ができるようになったといっても、各企業がガスの生産から供給までを担っているわけではありません。
従来通りの都市ガスの導管を使って、大手ガス会社を中心とした会社が供給したガスを使用します。そのためガスの質が落ちる、足りなくなる、などの心配は不要です。
ガス会社が撤退したらどうなる?
新しく契約した企業が倒産してしまったら、と心配になりますよね。特にガスは重要なライフラインです。倒産してガスが使えないということは避けなければなりません。
しかしもしガス会社が倒産しても、ガスの供給は止まらないので安心してください。大手ガス会社を中心とした、一般的なガス会社が供給を続けてくれるサービスがあります。
賃貸でもガス会社は選べる?
賃貸でガス会社が選べるかどうかは、借用時の契約内容によって異なるため、大家や不動産会社に問い合わせが必要です。
多くの場合、賃貸全体としてガス会社と契約しているため、個人でガス会社を選択することは難しいでしょう。特にLPガスはボンベの設置場所の観点からも難しいです。
会社変更ができない賃貸でガス代を見直したい場合は、プラン内容を見直すといいでしょう。
都市ガスはLPガスより安い?
一般的に都市ガスはLPガスより安いといわれています。
主な理由は2つです。1つ目は、LPガスにはボンベの運搬や交換に、人件費や運搬費がかかること。2つ目はエリアによって、シェアが高いLPガス会社が定着してしまっていて、価格競争が起きづらいことです。
LPガスは自由化され、どの会社から購入しても良いことになっています。しかしそれが周知されておらず、会社を比較しないまま大手と契約する人が多いため、価格が高止まりしているのです。
ガスを切り替えるときはガスメーターも取り替える?
ガス会社を変更した場合も、ガスメーターなどの設備はそのまま使うことが可能です。
ガスメーターの取り換えは、法律で取り替え時期が決まっているので、会社変更時ではなく、法律で定められたタイミングで取り替え工事をしてください。
ガス漏れが起きた時はどうしたらいい?
ガス漏れ等の重大な緊急性を伴う事案が発生した場合は、契約をした会社ではなく、地域の都市ガス会社(一般ガス事業者)が対応することになっています。つまり契約会社に関わらず、同じ対応をしてもらえるので安心です。
ただし、コンロが付かないなど緊急性の低い事案の場合は、契約会社に担当してもらうことになります。
ガス自由化のメリット
ガス自由化がもたらす、私たち消費者にとってのメリットはどのようなものがあるでしょうか。ここでは3点のメリットを解説していきます。
できる限りメリットを享受する形で、ガスを利用していける方法を検討しましょう。
ガス料金を下げられる
ガス自由化が行われることで、消費者がガス会社を選べるようになりました。とはいえガスに品質の差はないことから、ガス会社を選ぶ基準の大部分を占めるのがガス料金になります。
したがってガス会社は新しい顧客を獲得するため、ガス料金をできるだけ下げたプランを設定。結果として価格競争が活発化し、ガス料金が下がることが期待できます。
ガス会社のサービスが向上する
価格を下げるといってもガスの燃料は年々高騰しているため、ガス会社も簡単にはガス代を下げることができません。そのためガス会社はポイントがつくようにしたり、電気とセットで契約することで料金を抑えたり、定額プランを作ったりと、工夫を凝らし、契約プランの充実を図ります。
結果的にガス会社のサービスが向上し、消費者が得を感じられるでしょう。
LPガスも下がる可能性がある
ガスの自由化以前より、都市ガスのほうがLPガスより安いことが多かった市場ですが、価格競争が都市ガスに起きることで、さらに差が広がってしまいます。そうなるとLPガスの利用者が減り、LPガス会社は経営が困難に。
そこで都市ガス対応エリア内で、LPガスも価格競争に参入しなければならず、価格が下がる可能性が出てくるのです。
ガス自由化のデメリット
ガス自由化には、消費者にとってたくさんのメリットがありますが、一部デメリットも。ここでは主なデメリットを2点紹介します。
ガス自由化のデメリットを知ったうえで、お得に利用できる点は積極的に利用していきましょう。
ガス料金の地域差が広がる可能性がある
都市ガスの供給対象エリアは、都市部に集中しているため、価格競争も都市部で起きやすいです。そのため、価格競争が起きづらい地方との価格差が広がってしまう可能性があります。
ガスは生活に欠かせないインフラ事業なので、差が広がるのは良いことではありません。今後地方でも健全な価格競争が起きるような新事業者の参入が起きるかどうかが、地方でのガス代料金の見直しのポイントです。
ガス料金が安定しない可能性がある
特にガス自由化を受けて、新規参入をした新事業者のガス料金プランのなかには、ガス燃料の高騰が直接ガス代に影響するものがあります。つまり、逆に大手との契約のほうがガス代が安くなることも考えられるのです。
燃料が安く、ガスの供給が安定しているときは、とてもメリットが大きい新事業者のプランですが、供給が安定しない場合の料金設定も考慮したうえで、ガス会社の乗り換えを検討しなければなりません。
ガス自由化を利用してプランを見直そう
ガスの自由化についてや疑問点、新しいガス会社への乗り換え方法などを紹介しました。
ガス代が高く、少しでも安くなるようにガス自由化の制度を利用して乗り換えを検討している人もいるのではないでしょうか。確かにガスは毎日使うものなので、少しでもプランを見直すことができれば、家計に影響することは間違いありません。
金銭面や現在の使用状況、プラン内容、もしものときのフォローアップ体制など、あらゆる点を考慮しながら、うまく制度を利用していきましょう。