ガス会社や電力会社でさまざまなプランが出てきているなかで、最近は電気・ガスの2つをまとめる「セット契約」に注目が集まっています。しかし、なかには「セット契約って本当にお得なの?」「デメリットはないの?」と感じる方もいることでしょう。
実際、電気とガスをまとめて契約することが、必ずしも電気代・ガス代の削減につながるとは限りません。ほかにもいくつかのデメリットがあるため、安易にセット契約することは実は考えものなのです。
本記事では、電気とガスのセット契約について、デメリットとメリットを4つずつ紹介します。また、セット契約時のポイントや注意点についてもまとめました。セット契約が自分にあっているのかどうかをチェックしながら、参考にしてみてください。
電気とガスをまとめるデメリット4選
電気とガスをまとめて契約する際は、デメリットをしっかりと理解したうえで行いましょう。
「やっぱり変えなければ良かった」と思っても、また一から選び直して手続きするのは大変です。後悔しないよう、以下の点に留意してください。
必ず安くなるとは限らない
電気とガスをまとめる理由として、今よりも光熱費を節約したいという人がほとんどでしょう。多くの電力会社・ガス会社では、電気とガスの契約をまとめることで、セット割として通常の請求額から割引してくれます。
ところがセット割が必ずしもお得かというと、そうとは言いきれません。電気料金の安いプランの会社、ガス料金の安いプランの会社をそれぞれ選んだほうが、結果的に安くなる可能性もあります。
まとめることばかり意識して、視野を狭めないように気をつけましょう。
解約時に不都合が生じやすい
セット契約で注意することは、万が一解約しようとしたときに、電気とガスを別々に対応してもらえるかという点です。
たとえば電気代が思ったよりも安くならず、ほかの電力会社に切り替えたいと思っても、電気のみの解約ができないことがあります。どちらかを解約するなら、もう一方も解約扱いとなり、改めて各々の契約先を探さなければなりません。
知らずに電力会社を切り替えた結果、「ガスが使えない……」という事態にならないためにも、契約する際はよく確認しましょう。
選んだり契約したりするのが手間
一般的に、電気よりもガスの供給エリアのほうが狭く、利用できる地域が限られています。同じ会社でもエリアが異なる場合があり、片方が対象外だと契約できません。
そもそも数多くある電力会社やガス会社から、セットプランを提供しているところを探したり、利用条件の確認や料金比較をしたりすることは、根気のいる作業です。賃貸物件に住んでいる人は、事前に大家や管理会社に申告して許可を得なければならない場合もあります。
こういった契約会社の選定や、契約自体の手間がデメリットのひとつでしょう。
プランの選択肢が少なくなる
電気とガスのセットプランは、すべての会社が提供しているわけではありません。別々に契約する場合は、各社が用意する豊富な料金プランから自由に選べるものの、セットプランで絞り込むと選択肢は一気に狭まります。
さらに、あらかじめ内容が決められたセットプランは割引が適用される反面、もともとの料金が高めに設定されていることも。電気とガスをまとめることにこだわりすぎず、料金シミュレーションをするなどしてよく検討しましょう。
電気とガスをまとめるメリット4選
電気とガスの契約をまとめるデメリットをお伝えしましたが、マイナスなことばかりではありません。一緒に契約することで、いろんなプラスの効果が得られる可能性があります。
ここではセット契約のメリットを4つ見ていきましょう。
料金がお得になる場合がある
多くの場合、同じ会社の電気・ガスプランを利用すると、毎月の電気代・ガス代からいくらか割引されます。「合計請求額から○○円割引」「従量料金単価から○○円割引」など、適用される割引額は会社によってさまざまなので、各社のプランを比較してみましょう。
セット割だけでなく、まとめて契約した人向けのお得な特典がついてくることもあります。金額はもちろん、こうした特典内容もチェックしてみてください。
手続きが1回で済む
電気とガスを別の会社で契約する場合、それぞれの会社で申し込みの手続きをしなければなりません。しかし、セットプランなら電気とガスを同じ会社で一緒に契約できるため、1回の手続きで完了します。
初期契約に限らず、名義や住所などの変更手続きをするときも、同じくまとめて済ませることが可能です。転居時などは、引っ越し準備でバタバタしがちなので、手間を軽減できるメリットは大きいでしょう。
支払い管理や連絡が楽になる
電気とガスをひとつの会社にまとめると、月々の請求がまとまって来ます。支払いを一本化でき、普段から家計簿をつけている人は家計管理が楽になるでしょう。
なにかトラブルや困りごとがあった際に問い合わせするときも、基本的に連絡先が同じであるため、あちこち問い合わせる必要がありません。
特に災害時は電話が集中して繋がりにくく、電力会社・ガス会社の双方と連絡を取ろうとすると、時間も手間もかかります。一度でどちらの連絡も済めば、より早く対処できるでしょう。
手数料や違約金が免除されることがある
電力会社やガス会社のなかには、一定期間の契約を約束することで、通常よりも安い料金で利用できる「契約縛り」のあるプランを設けているところがあります。
こうしたプランを契約すると、もし期間内に転勤などで供給対象外エリアに引っ越すことになったとき、解約するための手数料や違約金が発生することがほとんどです。
これに対し、セットプランで契約期間を設けているところは多くありません。契約に縛りがないと、気軽に申し込みやすいでしょう。
電気・ガスは別々とセット、どっちがいい?
先述したとおり、電気とガスの契約先を1ヶ所にまとめることには、メリットもあればデメリットもあります。なにを重要視するかは人それぞれなので、別々で契約すべきなのか、まとめるべきなのか、どちらがいいとは一概にいえません。
重要なことは、「電気とガスをまとめるかどうか」ということよりも、自分の都合や生活スタイルに合ったプランを選ぶことです。
とはいえ、単純に今よりも光熱費を安くしたいという目的なら、どちらかというと別々に契約したほうが節約につながりやすいかもしれません。手間はかかりますが、それぞれ安価なプランを提供する会社を探して、確実に電気代・ガス代を抑えましょう。
電気とガスのセット契約で失敗しないためのポイント
せっかく時間をかけて選んだセットプランを契約したにも関わらず、思うようなメリットが感じられなかったら残念ですよね。
ここでは余計な手間をかけず、電気とガスのセット契約で得られるプラスの効果をより高めるコツをご紹介します。
ガス会社のセットプランを利用する
電気使用量が多い家庭では、電力会社よりもガス会社のセットプランを利用したほうが安くなる可能性が高いです。
たとえば東京ガスと東京電力では、東京ガスのほうが従量料金単価が低く、月に350kWh使うとすると386.7円お得に。
東京ガスの従量料金単価/kWh | 東京電力の従量料金単価/kWh | 差額(東京ガス-東京電力) | |
---|---|---|---|
基本料金 | 295.24~1771.44円(10~60A) | なし | |
~120kWh | 29.90円 | 30.00円 | -0.1円 |
121~300kWh | 35.41円 | 36.60円 | -1.19円 |
301kWh~ | 37.48円 | 40.69円 | -3.21円 |
※東京ガス:基本プラン、東京電力:スタンダードプラン(関東エリア)で比較
※東京ガスは2023年9月1日以降、東京電力は2023年7月1日以降の料金表
出典:東京電力、東京ガス
一方の東京電力では、ガス代が東京ガスより約3%安いものの、10,000円分のガスを使用しても300円の割引なので、東京ガスの割引額に及びません。ただし、一人暮らしで電気使用量が少ない場合は、東京電力のほうがお得でしょう。
自分の生活スタイルや使用量に合うほうを選んでみてください。
供給エリアを確認しておく
どんなにお得なセットプランを調べ上げても、住んでいる地域が供給エリアの対象外であれば利用できません。何日もかけて選んだ苦労が水の泡になってしまう場合があるため、料金を比較する前にまず供給エリアの対象かどうか確認しましょう。
同じ都道府県内でも、対象地域が細かく決められていることが多く、「自分の住む地域が含まれていない」ということもあります。確認する際は、都道府県だけでなく区市町村まで調べるようにしましょう。
セット割やキャンペーンを活用する
電気とガスをまとめることで、セット割が適用されるケースは多いですが、このほかに特典やキャンペーンを実施している会社も少なくありません。
具体的な例としては、「初月は電気代の基本料金が無料」「○○円分のポイントをプレゼント」といったものがあります。内容は多種多様なので、料金比較だけでは決めきれないというときに、こうした特典・キャンペーンにも注目してみましょう。
よりお得に契約できるように、うまく活用してみてください。
シミュレーションができる電力会社やガス会社
契約先や料金プランを決めるうえで、料金シミュレーションを行うことは大切です。現在の使用量や毎月の料金から、今よりいくらお得になるか予測できるため、比較検討に役立つでしょう。
ここではシミュレーションできるおすすめ電力・ガス会社をご紹介します。
ソフトバンク(おうちでんき)
サービス紹介
ソフトバンクが提供する「おうちでんき」は、関東エリアの供給エリアに限り、電気とガスをまとめて契約することで「おうちでんき ガスセット割」が適用されます。
ガスセット割では、電気代・ガス代のどちらも安くなるうえ、契約者限定のサービスが利用可能です。サービスには、24時間365日対応しているトラブルサポートや、最大50万円まで自己負担なしの修理サービスがあります。
ソフトバンクまたはワイモバイルユーザーならさらにお得なので、同社のスマホやタブレットを使用している人にもおすすめです。
会社情報
ソフトバンク株式会社 | |
---|---|
電話番号 | 0800-170-3710 |
公式サイト | |
シミュレートページ | https://www.softbank.jp/energy/price/simulator/web-denki/ |
東邦ガス
サービス紹介
東邦ガスで電気とガスを契約すると、ガス機器の種類によって電気の基本料金が5~10%割引になります。
会員サイト「Club TOHOGAS」に登録すると、毎月の電気代・ガス代に応じて、それぞれ200円につき1ポイント「がすてきポイント」が付与。ポイントは支払いにあてたり、電子マネーに変えたりできます。
別途ポイントをゲットできる「節電チャレンジ」も随時募集しているので、ぜひ参加して効率よく貯めましょう。
会社情報
東邦ガス株式会社 | |
---|---|
電話番号 | 0570-783-987 |
公式サイト | |
シミュレートページ | https://www.tohogas.co.jp/gasdenkisimulation/ |
CDエナジーダイレクト
サービス紹介
CDエナジーダイレクトで電気とガスをまとめた場合、プランによって電気代・ガス代の双方から0.5%割引されます。
毎月の請求額に応じたポイント還元に加え、CDエナジーダイレクトでは「祝割」を実施。結婚・出産・誕生日など、ライフイベントごとに一定のポイントがプレゼントされます。
CDエナジーダイレクトは、大手の中部電力・大阪ガスのグループ会社なので、「大手以外はなんとなく不安」という人も安心して利用できるでしょう。
会社情報
株式会社CDエナジーダイレクト | |
---|---|
電話番号 | 0120-811-792 |
公式サイト | |
シミュレートページ | https://www.cdedirect.co.jp/sim/ |
電気とガスをまとめる際の注意点
いざ電気とガスをまとめるために新しいガス会社へ切り替えようと思っても、契約の申し込みができなかったり、料金が発生したりする場合があります。
ガス会社を選定する手間や時間を無駄にしないためにも、以下の注意点を押さえておきましょう。
プロパンガスを使用している場合は利用がむずかしい
セットプランの多くは都市ガス対象で、プロパンガスに対応しているところは多くありません。プロパンガスを継続して使用したいという人は、電気とまとめることはなかなか困難でしょう。
もしセットで利用できるところが見つかったとしても、注意しなければならない点が、プロパンガス会社の変更の有無。たとえ同じプロパンガスでも、会社が変わるならガスボンベやメーターを交換する工事が必要です。
都市ガスと違って簡単には変えられないことに注意してください。
現在契約している会社の違約金に注意
新しい電力会社・ガス会社に乗り換えるときは、現在利用中の契約内容を確認しましょう。もし契約期間に縛りがあった場合、違約金を請求される可能性があります。
一般的に、電気やガスの契約先を変更する際、新しい会社に申し込み手続きをすれば、現在の契約会社への解約連絡は不要です。そのため、契約内容を確認することなく申し込むと、突然請求が来て後悔しかねません。
余計な出費を避けるなら、契約期間を過ぎてから手続きしましょう。
集合住宅は変更できない場合もある
戸建てであれば、配管工事やガス機器の設置など自由に供給体制を整えられますが、賃貸住宅・集合住宅だと話は別です。これらは物件ごとに一括管理されていることが多く、個人の判断で勝手に変更できない場合があります。
具体的には、工事を必要とするプロパンガス会社の変更や、プロパンガスから都市ガスへの切り替えといったケース。ガスだけでなく電気に関しても、高圧一括受電契約の場合は個別に電力会社を変更できません。
トラブルを避けるためにも、変更可能かどうか大家や管理会社に必ず確認しましょう。
電気のガスのセット契約には向き・不向きがある
電気・ガスをセットで契約すると、割引が適用されたり、家計管理や契約手続きが楽になったりと、いろんなメリットが得られます。
とはいえ、使用状況によってはデメリットのほうが大きくなる可能性もあり、人それぞれ向き・不向きがあることは事実です。
電気とガスをまとめるなら、本当に今よりもお得になるのか、なにか不都合が生じないかなど、よく確認することが大切。本記事でご紹介した注意点や失敗しないコツを参考に、後悔のないプランを選んでください。