新しく事業をはじめるときの設備や車の購入を考えるとき、初期投資をできるだけ抑えたいと思うことがほとんどでしょう。
そこで選択肢にあがるのが、「リース」や「レンタル」。購入よりも安価に設備を利用でき、長期的なコストの見通しもしやすく利用する企業や人は増えています。
しかし「リース」と「レンタル」は、どちらも商品を一定期間使用するための契約形態ですが、その特徴には違いが。きちんと違いを理解し自分に合った契約形態を選択しなければ、逆に損をしてしまったりトラブルにつながることもあります。
この記事ではリース、レンタルそれぞれの特徴や違い、メリット・デメリットを詳しく解説。自分にはリースとレンタルのどちらが適しているか、この記事を参考にしてみてくださいね。
リースとは?「リース」の基礎知識
リースとは、利用者が希望する物件をリース会社が購入し、その物件をリース会社から借りることです。利用者は、月額料金として「物件の購入価格×リース料率」をリース会社に支払います。
リースは、設備投資に必要な多額の購入費用が不要で、毎月少額で設備を利用できることが特徴です。リース期間は、およそ半年から10年が一般的で、長く使い続けられるコピー機や車などがリース物件として多く見られます。
さらに、リースは「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース」に分けられます。
ファイナンスリース
ファイナンスリースとは、中途解約不可でフルペイアウトの特徴をもつリースのことです。
フルペイアウトとは、利用者がリース期間中に、物件の購入費用と諸経費のほぼ全額をリース料として支払う仕組み。リース料の総額は、物件の購入費用よりも高くなります。
オペレーティングリース
オペレーティングリースとは、ファイナンスリース以外のリース取引のことです。
一般的にリース料は、リース期間満了後の物件の残存価額を引いた金額。簡単に説明すると、100万円の物件を使用して1年後の価値が30万円になる場合、リース期間が1年のリース料は70万円(100万円-30万円)となります。
オペレーティングリースは中途解約が可能。利用者はリース期間分のリース料を支払うため、物件の購入費用を全額まかなう必要がありません。
オペレーティングリースのリース物件は、使用後価値が残るものに限られます。しかし、ファイナンスリースよりも利用者の都合にあわせた柔軟な契約が可能です。
リースの流れ
一般的なリースの流れは以下のとおりです。
- 利用者がリースしたい物件を選ぶ
- 見積りを確認、リース会社が審査を行う
- リース契約を締結
- リース会社が売り主から物件を購入し、利用者へ引き渡す
- リース期間の開始(リース料を支払う)
- リース期間満了(物件の返却または再リース契約を締結)
リースは、「利用者・リース会社・物件の売り主」の3社間取引となります。
レンタルとは?「レンタル」の基礎知識
レンタルとは、借りたい物件をレンタル会社が所有する物件から選んで借りることです。レンタル期間は、日単位や月単位など、ほとんどが短期間。利用者は、期間に応じたレンタル料をレンタル会社に支払います。
代表的なレンタル品といえば、DVDや着物、レンタカーなどがあり日常的によく目にするでしょう。レンタルは借りるタイミングや期間を問わず、簡単に借りられる点が大きな特徴です。
レンタルの流れ
一般的なレンタルの流れは以下のとおりです。
- レンタル会社がレンタルされそうな物件を在庫として購入
- 利用者が在庫からレンタルしたい物件を選ぶ
- レンタル契約を締結(レンタル料を支払う)
- レンタル期間の開始
- レンタル期間満了(レンタル品の返却)
レンタル料は、リースとは違い物件の使用前に支払います。
リースとレンタルの違いとは?
リースとレンタルの違いをまとめました。ぜひ、参考にしてみてください。
リース | レンタル | |
---|---|---|
契約期間 | 中長期 | 短期 |
対象物件 | 利用者の希望した物件をリース会社が購入 | レンタル会社が保有する在庫から選択 |
中途解約 | 不可(例外を除く) | 可能 |
所有権 | リース会社(例外を除く) | レンタル会社 |
保守・修繕義務 | 利用者 | レンタル会社 |
月額料金 | 物件価格×リース料率(リース会社による) | レンタル会社による |
契約期間満了後 | 返却または再リース | 返却または契約期間延長 |
主な取引物件 | コピー機・車・重機など | DVD・着物・車など |
リースは、ファイナンスリースとオペレーティングリースで契約内容が異なるので、必ず上記の表が当てはまるとは限りません。契約を締結する前に、詳しく条件を確認しましょう。
以下は、リースとレンタルの違いを詳しく解説しています。
契約期間の長さが違う
リースはおよそ半年から10年、レンタルは日単位や月単位と契約期間の長さが異なります。リースとレンタルを、借りる期間にあわせて選ばなければ、結果的に多く費用を負担することになりかねません。
リースは長期間にわたって利用し続けるもの、レンタルは単発的に短期間利用するものがおすすめです。
レンタルは途中解約可能、リースは不可
レンタルは中途解約可能な一方、リースは中途解約が原則できません。
レンタルは単純に物件を借りる契約なので、レンタル期間の短縮や延長に柔軟に対応できます。一方リースは、リース会社が利用者に代わって物件を新規に購入しているため、購入費用を全額回収しなければなりません。
リース会社の利益とならない中途解約は、難しいでしょう。どうしてもリース契約を中途解約したい場合は、残りのリース料を一括で支払えば解約できることも。
また、レンタルでも中途解約不可な場合があるので、中途解約したい場合は各契約会社に相談しましょう。
リースは契約や審査があり手続きが複雑
リースは、リース料の支払いが長期間にわたり、総額が物件の購入費用に近く多額となります。そのため、リース会社は利用者の収入や借入の有無など、リース料を支払う能力があるのか、利用者に対して審査が必要です。
利用者からすれば、リースの契約や審査は複雑で面倒に感じるかもしれません。反対に、レンタル会社は簡単な事務手続きのみで、物件を借りられます。
会計上の取り扱いの違いはある?
会社や個人事業主は、事業のなかで発生した取引について会計処理が必要です。
レンタルの場合、一般的にレンタル料を勘定科目「賃借料」で費用計上します。一方リースの場合、物件の購入費用全額を「リース資産」「リース債務」として計上し、決算時は減価償却の処理が必要です。
ただし、リース料が少額の場合や、契約の種類がオペレーティングリースの場合など、一定の条件を満たせば、勘定科目「リース料」で費用計上でき、資産計上は行いません。
上記の会計処理は一般的な方法なので、事業形態や会社のルールによって異なります。新しいリース会計基準(IFRS16号)の適用など法改正される可能性も。事前に監査法人や会計事務所と会計処理について相談することがおすすめです。
リースのメリット・デメリット
ここでは、リースのメリット・デメリットを解説します。リース契約するのか、メリットとデメリットをふまえて検討してみてください。
リースのメリット
まず、リースのメリットを解説します。ご紹介するメリットは以下のとおりです。
- リース費用は経費にできる
- 最新のモデル・設備を利用できる
- 少額で設備を導入できる
- コストを見通しやすい
ひとつずつ順番に見ていきましょう。
リース費用は経費にできる
前述したとおり、リース料が少額の場合や契約の種類がオペレーティングリースの場合など、一定の条件を満たせば、リース料を経費として費用計上できます。リース期間を通じて一定の金額を費用計上できるので、収益のバランスが取りやすく会計処理も簡単です。
反対に、設備を購入した場合は資産計上と減価償却の処理によって、会計処理が複雑化します。
ただし、リースの契約内容によっては、設備を購入したときと同様、資産計上が必要な場合も。誤った会計処理をしないよう注意しましょう。
最新のモデル・設備を利用できる
リースは、利用者が希望した物件をリース会社が新規に購入するので、最新の設備を利用しやすいと考えられます。
とくに、パソコンやコピー機。これらは新しい技術を取り入れて開発が次々に行われるため、ほかに比べて機能が古くなりやすいです。設備の耐用年数にあわせてリース期間を設定すれば、リース物件を入れ替えながら最新の設備を常に使い続けられるでしょう。
少額で設備を導入できる
リースは、設備を購入する多額の初期費用が必要ありません。購入費用に比べるとかなり少額で設備を導入可能。リースの月額料金は、リース期間が長いほどレンタル料より安く済みます。
さらに、設備投資の初期費用を借入する必要がないため、融資の枠を使用せずに済むこともメリットです。
コストを見通しやすい
リースは、リース料の支払いが月額払いで毎月出費する金額が一定です。そのため、設備利用にかかるコストを先々まで見通しやすいと考えられます。
会社の場合、コストが見通せるとそれだけ早く会社の資金繰りに反映可能。資金が不足しそうなときは、資金調達に向けていち早く行動できます。
リースのデメリット
次に、リースのデメリットを解説します。ご紹介するデメリットは以下のとおりです。
- 契約期間終了後に返却しなければならない
- 中途解約できない
- 保守・修繕の義務がある
こちらも、ひとつずつ順番に見ていきましょう。
契約期間終了後に返却しなければならない
リースは、リース期間が満了すると、物件をリース会社に返却しなければなりません。延長したい場合は、再リース契約を結び再リース料を支払えば、物件を使い続けられます。
ちなみに、再リース料はリース料より安価なことが多いです。
中途解約できない
リースは、原則として中途解約できません。リース会社は、利用者が希望した商品を新規で購入するため、購入費用を全額リース料として回収する必要があります。
万が一中途解約したい場合は、残りのリース料を一括払いし契約満了するしかないでしょう。
保守・修繕の義務がある
リースでは、利用者が物件の保守・修繕義務を負っています。そのため、レンタルは物件の保守・修繕費用をレンタル会社が負担するのに対して、リースの場合は利用者が負担しなければなりません。
リースする際は、リース料とは別に物件の点検費用や、壊れた場合の修繕費用がかかることを考慮するべきでしょう。
レンタルのメリット・デメリット
ここでは、レンタルのメリット・デメリットを解説します。リースよりもレンタルが向いている場合があるので、ぜひ参考にしてみてください。
レンタルのメリット
まず、レンタルのメリットを解説します。ご紹介するメリットは以下のとおりです。
- 短期で借りることができる
- 複雑な手続きが不要
- 保守・修繕の義務がない
- 中途解約が可能
- 廃棄する場合の費用がかからない
ひとつずつ順番に見ていきましょう。
短期で借りることができる
レンタルは、物件を短期間で借りられます。利用者が必要なときに必要な期間でレンタルできるので、突発的な需要にも対応可能。物件の使用後は、レンタル会社に返却するため保管場所も不要です。
複雑な手続きが不要
レンタルは、リースと比べてレンタル料の支払い管理だけで済むため、資産計上や減価償却の処理など複雑な事務手続きが不要です。
また、利用者の審査や契約書の締結などの手続きが不要で、比較的早く物件の使用を開始できます。
保守・修繕の義務がない
レンタルの場合、物件の保守・修繕はレンタル会社が責任をもって行うため、利用者に保守・修繕の義務はありません。物件に不具合が出た場合、通常の利用範囲内であれば基本的に無償で交換・修理できます。
中途解約が可能
レンタルは、基本的に中途解約が可能です。レンタル期間の短縮や延長に柔軟に対応してもらえます。
ただし、なかには中途解約できないものや違約金が発生する場合もあるので、契約内容を事前に確認しましょう。
廃棄する場合の費用がかからない
レンタルした物件は、使用後レンタル会社に返却します。よって、物件の廃棄費用を考える必要がありません。
設備を購入した場合は、自分で保管し、使わなくなれば廃棄する手間がかかります。設備が大きければ、その分廃棄費用も高くなるでしょう。
使用頻度が低い設備に関しては、購入よりもレンタルがお得になると考えられます。
レンタルのデメリット
次に、レンタルのデメリットを解説します。ご紹介するデメリットは以下のとおりです。
- 借りる機種・モデルの選択肢が少ない
- 結果的に割高になることもある
- 主に新品ではなく中古品である
レンタルは利用しやすい半面、気づかぬうちに損する場合があります。ぜひ、参考にしてみてください。
借りる機種・モデルの選択肢が少ない
レンタルする物件は、レンタル会社が所有する物件から選ぶため、選択肢が少なかったり在庫がなかったりなど、利用者の希望が叶わないこともあります。
レンタル会社によって所有する物件はさまざまです。希望する物件がない場合は、ほかのレンタル会社に問い合わせてもよいでしょう。
結果的に割高になることもある
レンタル料は、短期間で借りる場合、購入費用やリース料に比べて安価になります。しかし、安価だからとレンタルし続ければ、結果的に負担する費用が高くなることも。
月額料金だけでなく、レンタル期間に応じてレンタル料は全額いくらになるのか、考慮するべきでしょう。
主に新品ではなく中古品である
レンタル物件は、レンタル会社が所有する物件をさまざまな人が利用するため、ほとんどが中古品です。物件は、ある程度劣化していることを理解しておきましょう。
物件の点検や修繕は、レンタル会社が行います。万が一、物件に不具合があればレンタル会社に交換や修繕を依頼しましょう。
状況にあわせてリース・レンタルを上手く使い分けよう
リースとレンタルは、どちらも設備の購入費用が不要で、少額で設備を利用できます。リースは中長期にわたって使い続ける最新設備の導入、レンタルは使用頻度が低く短期間で借りたい場合におすすめです。
ぜひ、借りたい設備や物件の使用頻度の予定など、状況にあわせてリース・レンタルをうまく使いわけてください。