近年では省エネ効果が高いとして、多くの店舗や家庭にLED照明が導入されています。よく「電気代が安い」といわれるものの、従来の照明と比べてどのくらい安くなるのか、いまいちわからないという人もいるのではないでしょうか。
実際のところ、LED照明は白熱電球や蛍光灯よりも消費電力が低く、電気代が抑えられます。照明自体の価格は高くなりがちですが、そのぶん寿命が長いので、長期的に見ればコスパが悪いとはいえないでしょう。
ただしLED照明には、ほかの照明にはないデメリットもあります。電気代の安さにばかり目がいくと、思わぬ事故に繋がる可能性もあるため注意しなければなりません。
本記事では、各照明のコスト比較からLED化における注意点まで徹底解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
「LED」とは
そもそも「LED」とは、「Light Emitting Diode」の頭文字を取った略語で、発光ダイオードを意味します。
発光ダイオードは、電気を通す「導体」と、電気を通さない「絶縁体」の中間の性質をもつ半導体で、電気のエネルギーを光に変換することが可能です。白熱電球や蛍光灯よりも少ない電気で明るく光ることや、有害物質の排出が少ないことから、積極的なLED化が推進されてます。
どれが安い?蛍光灯・白熱電球・LED照明を比較
部屋の照明をLED化した場合、今よりも電気代は安くなるのか、どのくらい変わるのか気になりますよね。
ここでは蛍光灯・白熱電球・LED照明について、「電気代」「寿命」「販売価格」の比較、および総合評価を見ていきましょう。なお、比較する照明は下記のとおりです。
- 蛍光灯:Panasonic FL10ECWF3
- 白熱電球:Panasonic LDS100V36WC2
- LED照明:Panasonic LDA5LDGSZ4F
電気代
照明にかかる電気代は、「消費電力(W)÷1,000×使用時間(h)×電力単価(円/kWh)」の計算式で算出できます。消費電力を1,000で割っているのは、W(ワット)をkW(キロワット)の単位に直すためです。
電力単価については、利用している電力会社やプランによって異なるので、今回は家電公取協が目安単価としている「31円/kWh(税込)」で計算します。
照明の種類 | 蛍光灯 | 白熱電球 | LED照明 |
消費電力 | 10W(※) | 36W | 4.9W |
明るさ | 520lm(ルーメン) | 420lm | 485lm |
1時間あたりの電気代 | 0.31円 | 1.11円 | 0.15円 |
1日(8時間)あたりの電気代 | 2.48円 | 8.92円 | 1.21円 |
1ヶ月(30日)あたりの電気代 | 74.4円 | 267.84円 | 36.45円 |
1年あたりの電気代 | 892.8円 | 3,214.08円 | 437.47円 |
※点灯管つき器具の場合
出典:直管 パルック 10形 クール色 FL10ECWF3|Panasonic、ミニ電球 36W(クリア) LDS100V36WC2|Panasonic、パルック LED電球 プレミアX 4.9W(電球色相当) LDA5LDGSZ4F|Panasonic
上記は、小数点第三位以下を切り捨てた電気代です。LED照明と白熱電球を比較すると、1年間で約2,776円もの差がつきました。蛍光灯と比べても、半額以下に収まっています。
寿命
LED照明は、寿命が長いことも強みだといわれていますが、ほかの照明とどれほど違いがあるのでしょうか。こちらもPanasonicが販売している各照明の商品スペックをもとにご紹介します。
照明の種類 | 蛍光灯 | 白熱電球 | LED照明 |
寿命 | 6,000時間 | 1,500時間 | 40,000時間 |
出典:直管 パルック 10形|Panasonic、ミニ電球 36W|Panasonic、パルック LED電球 プレミアX 4.9W|Panasonic
LED照明の寿命は、蛍光灯の約6.5倍、白熱電球の約26倍という結果に。上記を見ても、LED照明はかなり長持ちすることがわかりました。
販売価格
続いて、各照明の販売価格を比較します。LED照明はオープン価格であるため、ここではビックカメラにおける販売価格を参照しました。
照明の種類 | 蛍光灯 | 白熱電球 | LED照明 |
販売価格/個 | 1,232円 | 407円 | 1,390円 |
1年あたりの価格 | 1,811円 | 2,394円 | 308円 |
10年あたりの価格 | 18,117円 | 23,941円 | 3,088円 |
※小数点以下は切り捨て
出典:直管 パルック 10形|Panasonic、ミニ電球 36W|Panasonic、LED電球|ビックカメラ.com
各照明の寿命をもとに、1年間および10年間使用する場合に必要な購入費用も算出。1個あたりの価格に注目すると、LED照明は高く感じるかもしれません。しかし長期的に見ると、かなりお得であることが一目瞭然です。
総合評価
電気代・寿命・販売価格の結果から、各照明の総合的なランニングコストを比較してみましょう。
照明の種類 | 蛍光灯 | 白熱電球 | LED照明 |
1年間のランニングコスト | 2,703円 (=1年間の電気代:892.8円)+(1年あたりの価格:1,811円) | 5,608円 (=1年間の電気代:3,214.08円)+(1年あたりの価格:2,394円) | 745円 (=1年間の電気代:437.47円)+(1年あたりの価格:308円) |
10年間のランニングコスト | 27,045円 (=10年間の電気代:8,928円)+(10年あたりの価格:18,117円) | 56,081円 (=10年間の電気代:32,140円)+(10年あたりの価格:23,941円) | 7,462円 (=10年間の電気代:4,374円)+(10年あたりの価格:3,088円) |
毎日8時間使用した場合、電気代を含めたランニングコストは、LED照明が圧倒的に安いことがわかりました。長く使えば使うほど、LED照明を使用するメリットは大きくなります。
ちなみに上記は照明1個あたりのコストなので、寝室やリビング、子ども部屋など、複数箇所をLED照明に変えればさらにお得です。
なるべく家計の負担を軽くしたい人は、ぜひLED化を検討してみてください。
照明をつけっぱなしにした場合の電気代
朝急いでいると、つい電気を消し忘れて出かけてしまうこともあるでしょう。
たとえば出張や旅行でしばらく留守にする場合、照明が24時間つけっぱなしの状態だと、どれほど電気代がかかるのでしょうか。以下の蛍光灯・白熱電球・LED照明を例にまとめました。
蛍光灯:Panasonic FL10ECWF3
白熱電球:Panasonic LDS100V36WC2
LED照明:Panasonic LDA5LDGSZ4F
照明の種類 | 蛍光灯 | 白熱電球 | LED照明 |
消費電力 | 10W | 36W | 4.9W |
1時間あたりの電気代 | 0.31円 | 1.11円 | 0.15円 |
24時間つけっぱなしにした場合の電気代 | 7.44円 | 26.78円 | 3.64円 |
1週間後 | 52.08円 | 187.46円 | 25.48円 |
1ヶ月後(30日) | 223.2円 | 803円 | 109.2円 |
※電力単価:31円/kWh(税込)、小数点第三位以下は切り捨て
この例では、1ヶ月間で100~800円ほど無駄な電気代を負担するはめに。3箇所つけっぱなしなら、白熱電球では約2,400円も上乗せされます。
消し忘れないことが大切ですが「よく消し忘れてしまう…」という人は、LED照明に変えたほうが負担は少ないでしょう。
頻繁なオン・オフは電気代が高くなる?
「頻繁に電気をつけたり消したりすると、逆に電気代がかかる」という噂を聞いたことがある人はいるのではないでしょうか。
照明は、点灯するときにより多くの電力を消費することから、短時間であれば消さないでおいたほうがいいと思われがちです。ところが、スイッチをオンにしたあとの3秒間にかかる電力量は、概ね下記の点灯時間の電力量に値するといわれています。
蛍光灯 | 6.6秒間 |
白熱電球 | 0.8秒間 |
LED照明 | ほとんどなし |
出典:照明点灯時の消費電力増加は、気にしなくてもいいレベルらしい|ライフハッカー・ジャパン
つまり蛍光灯の場合、6.6秒以上つけっぱなしにするなら消したほうがお得ということです。ほとんど気にする必要のない電力量なので、こまめに消すことをおすすめします。
電気代の安さだけじゃない。LED照明のメリット
LED照明を選ぶ人の多くは、電気代を安く抑えられることが理由でしょう。しかしLED化することで得られる効果は、それだけではありません。
ここでは費用面以外のメリットをいくつかご紹介するので、チェックしてみてください。
虫が集まりにくい
夜の街灯の周りには、よく虫が飛んでいるのを見かけますよね。これは、白熱電球や蛍光灯が放つ光の波長が、虫が光を感知しやすい「紫外線」の領域にあたり、導かれるように寄ってくるためです。
しかしLED照明には、ほとんど紫外線が含まれていません。明るい光を放っていても虫が集まりにくいので、家のなかはもちろん、玄関前やベランダなど外の照明におすすめです。
熱を発さない
白熱電球や蛍光灯は、長く点灯していると100℃以上の高温になることがあります。
照明がどれほど発熱するかは、「電気を可視光に変換する効率=変換効率」が関係。可視光にならない部分が熱に変わるため、効率の悪い電球や蛍光灯は熱くなりやすいです。
一方、LEDは変換効率に優れており、電気の多くをそのまま光に変えられます。あまり熱を発さないので、暑い日に部屋の温度が余計に上がったり、火傷したりすることを防げるでしょう。
環境にやさしい
従来の一般的な照明には、水銀や鉛、カドミウムが使用されています。これらの物質は有害性が高く、廃棄処理に注意しなければなりません。
LED照明はすべてフリーであるため、環境や人体にやさしい照明といえます。
このほか、二酸化炭素(CO2)の排出量も少ないことから、地球温暖化の防止にも期待できるでしょう。
きちんと理解しておこう。LED照明のデメリット
これまでLED照明のメリットをお伝えしてきましたが、デメリットがないわけではありません。きちんと理解したうえで使用しないと、危険な事故につながる可能性もあります。
以下にLED照明の注意すべき点を解説するので、しっかりと頭に入れておきましょう。
重量がある
LED照明は、電子回路などの部品を含んでいるため、一般的な照明と比べて重みがあります。各メーカーでは軽量化に努めており、現在はそこまで問題視されなくなっているものの、使い方によっては注意が必要です。
たとえばシャンデリアのように、ひとつの照明器具に大量の電球を取り付ける場合、耐荷重を超えないようにしなければなりません。オーバーすると、落下に巻き込まれて大怪我することにもなりかねないので、必ず確認しましょう。
高熱に弱い
LED照明は、発光する際にそれほど熱を発さないことから、高熱に耐えられるように作られていません。そのため内部の温度が80℃を超えると、劣化が進んで寿命が早まったり、回路が破壊されて発光しなくなったりする可能性があります。
浴室などの放熱しにくい場所や、屋外の日光が当たりやすい場所での使用は避けたほうがいいでしょう。
光が広がりにくい
蛍光灯や白熱電球は、全方向に光が広がるのに対し、LED照明は一方向に進む性質をもっています。上部に光が広がりにくいLED照明では、場所によって十分な光が届きません。こうした明るさのムラが生じやすい点がデメリットとして挙げられます。
ただし、製品によって「140°」「260°」というように光の広がりの角度が選べるので、全体を明るくしたい場合は角度の大きいものを選ぶことで解決できるでしょう。
照明をLED化するときの注意点
LED照明のメリットとデメリットを理解し、いざ交換しようと試みた結果、「取り付けられない」「眩しすぎて目がチカチカする」といった失敗も少なくありません。
ここでは家の照明をLED化するときの注意点を解説します。
取り付け可能か確認する
電球の場合、器具に差し込む口金サイズや形が合っていないと取り付けられません。無理に押し込んだり、多少緩いまま使用したりすることはやめましょう。
蛍光灯については、照明器具がそもそもLEDに対応していないことがあります。この場合、LEDに適した配線に変えるための工事が必要です。誤った組み合わせで使用すると、ショートや発火を招く危険性があるので絶対に避けましょう。
部屋の広さに適した明るさを選ぶ
LED照明は、部屋の広さによって選ぶべき明るさが異なります。
商品パッケージに適する畳数の表示があれば参考にしやすいですが、ない場合は照明の明るさを表す「lm(ルーメン)」の数値で判断しなければなりません。以下は照明のタイプ別に、部屋の広さに適するlmの数値をまとめたものです。
部屋の広さ | LEDシーリングライト | LEDペンダントライト |
~4.5畳 | 2,200~3,199lm | 1,980~2,879lm |
~6畳 | 2,700~3,699lm | 2,430~3,329lm |
~8畳 | 3,300~4,299lm | 2,970~3,869lm |
~10畳 | 3,900~4,899lm | 3,510~4,409lm |
~12畳 | 4,500~5,499lm | 4,050~4,949lm |
~14畳 | 5,100~6,099lm | 4,590~5,489lm |
余計な電力を消費しないよう、なるべく部屋の広さに合った明るさの照明を選びましょう。
ほしい機能を備えているか確認する
LED照明には、明るさや光の色調を調節できる機能がついているものがあります。夜はそこまで明るくする必要はないため、暗めに設定することで消費電力を最小限に抑えられるでしょう。
調光調色のほかには、設定した時間に自動で消灯・点灯してくれるタイマー機能を備えたものも。防犯対策や消し忘れ防止に役立つので、こうした便利な機能があるかどうかも、LED照明を選ぶときのポイントです。
電気代の節約にはLED照明がおすすめ
LED照明は省エネ効果が高く、電気代の節約に効果的だといわれていますが、実際に蛍光灯・白熱電球と比べてみてもお得であることがわかりました。
デメリットもあるとはいえ、使い方に気を付ければ解消できます。電気代のほかにも、LED照明にはさまざまなプラスの効果が期待できるため、メリットのほうが大きいでしょう。
LED化するか悩んでいる人は、まずは一部屋だけでも変えてみてはいかがでしょうか。