電力自由化に伴い、新電力へ乗り換えるという方が徐々に増えつつあります。とはいえ、なかには「デメリットはないの?」「むしろ高くなったりしない?」など、不安があるという方もいるでしょう。
実際、「新電力であれば必ずしも電気代が安くなる」というわけではありません。とりあえず、新電力に乗り換えてみようという方もいますが、自分に最適なプランを選ばなければむしろ損してしまうこともあるでしょう。
本記事では、新電力のデメリットやメリットについて触れ、失敗しないためのコツをご紹介します。よくあるトラブルや注意点についてもお伝えするので、乗り換える前にぜひチェックしてみてください。
新電力とは?
新電力とは、2016年に電力の小売り全面自由化に伴って、新規で参入してきた電力事業者のことです。
電気料金を競争化することにより、電気料金を引き下げる目的で全面自由化が行われました。全面自由化の影響を受け電力供給事業者の数が増えたことで、電気料金やサービスに電力供給事業者ごとの差が生じています。
以前より安い料金での電力利用や、支払い方法の多様化、ほかのサービスと連携した契約が可能になったことにより、自分に合った電力供給事業者を選べるようになりました。
新電力のデメリット
自分で電力供給事業者を選べるようになり、電気料金に対する自由度は上がりましたが、デメリットの存在も忘れてはいけません。
ここでは、下記の5つの項目に分けて新電力のデメリットをご紹介します。
- 電気代が高くなる可能性がある
- 自分に適したプランを選ぶのに手間がかかる
- 契約期間の縛りや違約金がある
- 賃貸物件では利用できないケースがある
- 電力会社が撤退・倒産するリスクもある
すべての新電力がデメリットに当てはまるわけではありませんが、選び方を間違えると以前より電気料金がかかってしまう可能性もあるので注意しましょう。
電気代が高くなる可能性がある
新電力のプランには、「燃料調整額」に上限があるものとないものがあり、上限がないプランに加入していると急に電気料金が跳ね上がることがあります。
燃料調整額とは、火力発電の際に使う燃料の価格変動を、毎月の支払いに反映させること。燃料の価格が高騰していくと燃料調整額も高騰するため、寒波などにより燃料が不足した際は燃料の価格が高騰して電気料金も高くなってしまいます。
自分に適したプランを選ぶのに手間がかかる
新電力の参入前は、契約できる電力会社が地域の大手電力会社だけだったため、契約時に悩むことはありませんでした。
しかし、現在は多数の新電力会社が参入したことにより選択の自由が生まれ、電力会社を選ぶのにも一社一社吟味しなければいけません。
自分のライフプランと新電力のプランやサービス内容を加味して、自分に合ったプランを探すことが大切です。適当に選ぶと、電気料金が思った以上に高くなり後悔する可能性があるので、しっかりと自分に合う新電力を選びましょう。
契約期間の縛りや違約金がある
従来の大手電力会社で契約しているときは、引越し時に解約だけ行うことで契約の解除ができました。しかし、新電力の会社のなかには、契約期間の縛りがあるものや解約時に違約金が発生するケースがあります。
大手電力会社と契約する感覚で新電力の会社と契約し、のちのち契約期間のことや違約金のことを知ると損をしてしまう可能性があるので、契約前に確認をしておきましょう。
特に、引越しや転勤が多い人は短期間での解約が考えられるので、縛りや違約金のない会社を選ぶことがおすすめです。
賃貸物件では利用できないケースがある
アパートやマンションなどの賃貸物件は、管理会社が一括で管理しているケースがあるため、自分で契約する電力会社が選べない可能性があります。もちろん、自分で電力会社を契約する形であれば、新電力と契約することは可能です。
賃貸物件の場合は、まず管理会社や大家に確認を取り、個別に契約ができるのであれば契約を進めましょう。勝手に契約すると、のちのちトラブルに発展することも考えられるので、必ず相談するようにしてください。
電力会社が撤退・倒産するリスクもある
電力の市場価格が高騰したことにより、新電力は契約停止・撤退・倒産などの影響を受けました。2021年の4月までに登録があった706社のうち195社が、契約停止・撤退・倒産などの影響を受けています。
大手電力会社でも赤字が出るなか、まだ財務基盤が整っていない新電力は、今後もいつ撤退・倒産となるかわかりません。撤退や倒産をする際には、2ヶ月ほど前に通知が届くようなので、通知が届いたら次の電気事業者を早く探すことが必要です。
新電力のメリット
不安な部分がある新電力ですが、もちろん大きなメリットも存在します。従来の大手電力会社の料金プランとは違い、自分で選択できる自由があることもひとつのメリットです。
ここでは、下記の5項目に分けてメリットを紹介します。
- 電気代を節約できる
- 乗り換え特典が受けられる
- ガスやインターネットとのセット割プランがある
- 環境に配慮できる
- 自分に最適なプランを選べる
自分のライフプランに合わせた新電力を選ぶために、メリットの内容を確認していきましょう。
電気代を節約できる
電力の小売り全面自由化の目的である、「電力市場の独占化を解消すること」と「競争により電気料金を下げること」が、新電力の参入に繋がりました。
新電力会社はほかの電力供給会社に差をつけるため、電気料金が安いプランでの提供が行われています。そういった新電力会社と契約することで、以前より電気代金が安くなり、電気代の節約につながるでしょう。
電気料金は暮らしていくうえで必ず支払わなければいけないものなので、できる限り節約したいですよね。新電力は、電気料金の節約を叶えるひとつの手法と言えるでしょう。
乗り換え特典が受けられる
なかには、契約や乗り換え時に特典を受けられる電力会社があります。特典やキャンペーンの内容は会社や時期によって異なるので、そのときに実施している内容を比較して電力会社を選べることも、ひとつのメリットと言えるでしょう。
キャンペーンの主な内容は、抽選でのギフトプレゼントや電気料金の割引、関連会社の商品やサービスの優待などです。特典の内容と電気料金プランを確認したうえで、自分に合った電力会社を選んでください。
ガスやインターネットとのセット割プランがある
新電力の会社によっては、ガスやインターネットなどとセットで契約することで料金が安くなる「セット割プラン」があります。ガスやインターネット料金を別で契約するなら、一緒にまとめて契約することで料金を安く済ませるほうがオトクですね。
安くなった分を貯金や別の出費に使えるので、月々の節約にもつながります。
環境に配慮できる
環境問題を深く考えている人は、自然に配慮した電力発電を行っている会社を選ぶことがおすすめです。
例えば、太陽光発電や風力発電などの発電方法を取り入れた新電力があります。再生可能エネルギーを利用して二酸化炭素の排出を避けることで、電力会社を選ぶだけで環境保護への貢献につながるのです。
今後の世界のことも視野に入れて、環境に配慮した電力会社選びをしてみるのはいかがでしょうか。
自分に最適なプランを選べる
新電力の会社は多数あり、それぞれが独自のプラン展開を行っています。そのため、さまざまなプランから自分に合ったプランをより精密に探し出すことが可能です。
自分のライフスタイルに合わせて、電気を長く使用する時間帯は安くなるプランを選ぶことで、価格競争している電力市場のなかでもさらに自分に合った安価なプランを選択できます。
選べる会社が多くて良いのですが、多すぎて選びきれないとなってしまわないように、自分が譲れない部分はしっかりと決めておきましょう。
新電力への乗り換えで失敗しないためのコツ
新電力へ乗り換えするときは、自分が新電力を利用できるのか、選びたい新電力の供給エリアなのかを最初に確認しておく必要があります。
ここでは、新電力へ乗り換えするにあたって失敗しないためのコツを3つ紹介するので、参考にしてください。
供給エリアを確認する
新電力会社には、全国展開している会社がある一方で、地域を限定して契約している新電力会社もあります。魅力的なプランの新電力会社を見つけても、供給エリアに住んでいなければ契約できません。
新電力を契約するときは、プランを確認する前に、自分が住んでいる場所が気になっている新電力会社の供給エリア内に属するかをチェックしましょう。
料金プランを確認する
同じ電力消費量でも、会社やプランによって料金が異なることが新電力です。今後ずっと払い続けていくので、できれば安く済ませたいですよね。そのためには、料金プランを比較することが大切です。
料金プランを比較するには、公式サイトで料金シミュレーションを使って料金を調べる、一括で料金比較ができるサイトで料金を比較するなどの方法があります。
携帯料金やガス・インターネット料金などとまとめて支払いができる「セットプラン」がある新電力もあるので、自分にあったプランを見つけてみましょう。
契約期間や違約金を確認する
新電力会社のなかには、契約期間や違約金の設定がされている会社があります。事前に確認していなかったことで、解約時にトラブルへと発展しないように、契約前には必ず契約期間と違約金について確認しておきましょう。
すべての新電力が契約期間・違約金が発生するわけではないので、のちのちに変更する可能性があるのであれば契約期間や違約金のない会社と契約をしましょう。
新電力への乗り換えでトラブルを起こさないための注意点
従来の大手電力会社から新電力へ乗り換える際は、電気料金が安くなる分、なにかトラブルに巻き込まれるのではないか不安になりますよね。
ここでは、新電力への乗り換えでトラブルを起こさないために注意したい点をご紹介します。
電力自由化に伴う詐欺に気を付ける
電力自由化に伴い、商品の販売の詐欺などが増えています。新電力の会社と偽って、電話で個人情報を引き出そうとする詐欺や、太陽光や蓄電池などの機材を売りつける詐欺が多く確認されているのが現状です。
詐欺の被害にあわないためにも、電力会社の登録確認を行い、契約条件に問題はないかチェックしましょう。
また、太陽光発電の設置は電力自由化には関係ありません。そういった話を持ちかけてきたときは、詐欺ではないかと疑うように気をつけてください。
契約期間と引越しのタイミングを考慮する
新電力には、契約期間を定めたプランを提供している会社があります。契約期間はだいたい1〜2年、違約金は1,000〜2,000円の会社が多いです。
契約期間中に引越しが重なってしまわないように、新電力の契約をする際はタイミングを考慮して契約する必要があります。引越しや出張が多い場合は、契約期間の縛りがない会社やプランを選択することがおすすめです。
担当者の説明不足がないか再確認する
新電力を契約するときは、ある程度自分で情報を調べることが大切です。新電力会社の担当者や営業マンは、なるべく契約をしてほしいためにデメリットをあえて話さないこともあるでしょう。
「良いと思って契約したが、自分のライフプランにはあまり合っていなかった」「解約しようと思ったが違約金がかかる」となると、せっかく安く済むはずの電力料金が高くなってしまう可能性があります。
新電力を契約するときは、担当者や営業マンの話を鵜呑みにせず、確認すべきところはしっかり確認しましょう。
新電力についてよくある質問
実際に変えてみると、思っていたのと違っていたり、新電力の会社自体が撤退してしまったりすることがあります。
ここでは、新電力についてよくある質問を集めたので、参考にしてください。
新電力から元の電力会社に戻すことはできる?
新電力から元の電力会社に戻すことはできます。戻す方法は簡単で、戻したい大手電力会社に申し込みをするだけです。
現在契約している新電力に、解約の手続きをする必要はありません。ただし、解約の際に違約金が発生する会社もあるので、急な違約金請求に焦ることのないように確認をしておきましょう。
新電力はなぜ安いの?
新電力が安い理由は、設備投資がいらないためです。
新電力は送配電をすることができず、既存の送配電設備を利用します。そのため、大手電力会社のように設備に投資する費用がかからず、安価で電力供給できるのです。
さらに、新電力同士の価格競争によって、より安い価格での電力提供を実現しています。
撤退している新電力会社があるのはなぜ?
電力の市場価格が高騰したことにより、財務基盤が安定していない新電力会社において安い価格での電力供給がむずかしくなったためです。
大手電力会社でも赤字になってしまうくらい、電力市場の価格高騰は電力会社に対して大きなダメージを与えました。今後も電力の市場価格が高騰するにつれて、撤退・倒産する新電力会社が出てくるかもしれません。
新電力は自分に合っているかどうかが重要
新電力は、今後支払い続けなければいけない電気料金を安く済ませられる手段です。しかし、自分に合ったプランを選ばないと思った以上に安くならなかったり、以前より電気料金が上がったりする可能性があります。
電力の小売り全面自由化により、新たな詐欺が発生しているため、契約をする際には必ず事前にある程度情報を調べてからにしましょう。上手にプランを選択することで、月々の電気料金を節約できます。
新電力と上手に付き合い、今度のライフプランを充実させてください。