「マイノリティを受け入れよう」と聞くことはあっても、「では対義語は何か」と問われたら、サッと答えられない人も多いと思います。
マイノリティの対義語は、多数派や強い権力をもつ人々を指す「マジョリティ」です。
マイノリティとマジョリティの意味や具体例を知らないと、自分でも気づかぬうちにマイノリティの人々を傷つけてしまうかもしれません。
この記事では、マイノリティと対義語であるマジョリティについて、意味や使用語句の例、具体的にどのような人々を指すのかなどを紹介します。
差別をしないための考え方もあわせて解説するので、マイノリティとマジョリティについて知識を深めたい人はぜひ最後まで読んでみてください。
「マイノリティ」の対義語は「マジョリティ」
「マイノリティ(minority)」の対義語は「マジョリティ(majority)」です。
マイノリティは「少数派」や「それほど重要ではない」といった意味があるのに対し、マジョリティは「多数派」や「主要・重要な」といった意味があります。
数が少ないからマイノリティ、多いからマジョリティとは決まっておらず、少数者でも権力を持っている場合などはマジョリティと呼ぶこともあります。
「マイノリティ」と対義語「マジョリティ」が使われる例
マイノリティや対義語であるマジョリティは、セットで使われる言葉です。どちらに属するのかは、そのときの環境や立場などによって変わります。
ここでは、マイノリティと対義語・マジョリティがどのように使われるのか、いくつか例を紹介するのでチェックしてみてください。
社会的マイノリティ
社会的マイノリティとは、社会において少数派のグループや、不当にも弱者とされる人々を指します。
以下は社会的マイノリティと言われる例です。
- ある国においての外国人居住者
- 日本の学校に通う外国人留学生や、日本企業に勤める外国人労働者
- 障がい者
- LGBTQなどの性的マイノリティ(後述)
- ホームレス
- アイヌなどの少数民族
日本人が日本で暮らしているときはマジョリティでも、海外に移り住めばマイノリティになります。
本人がどうかではなく、周囲の人々に対して多数派か少数派か、強者か弱者かで、マジョリティ・マイノリティの判別は変わるのです。
性的マイノリティ
性的マイノリティ(セクシャルマイノリティ)とは、性対象や性自認(自分の性別をどう認識しているか)において、少数派の人々を指します。
性的マイノリティは、以下の頭文字をとった「LGBTQ」と呼ばれることが多いです。
- L(Lesbian、レズビアン):女性の同性愛者
- G(Gay、ゲイ):男性の同性愛者
- B(Bisexual、バイセクシュアル):両性愛者
- T(Transgender、トランスジェンダー):心と体の性が異なる、または違和感がある人
- Q(Questioning、クエスチョニング):自分の性や性対象が決まっていない、分からない人
※ Qは、「Queer(クィア):性対象や性自認が既存のカテゴリに当てはまらない人」も指します。
性的マイノリティの理解は、SDGs(持続可能な開発目標)のゴール5「ジェンダー平等」とも関係しています。
近年は、LGBTQに該当しないアセクシュアル(他者に恋愛感情や性欲を抱かない人)やXジェンダー(自分の性別がないと考える人)も認知されてきました。
LGBTQに当てはまらない人々も含む意味を込めて、近年は性的マイノリティを「LGBTQ+」と呼ぶこともあります。
ノイジーマイノリティ
ノイジーマイノリティ(noisy mainority)とは、少数派でありながら、あげる声が大きい集団のことです。
声が大きいだけでなく、うるさいというマイナスな意味を含めてラウドマイノリティ(Loud mainority)と言われることもあります。
具体的には、ネット上で誹謗中傷をする人や、炎上に加担する人、高い影響力を使って声高に騒ぎ立てるクレーマーなどを指す場合が多いです。
影響力や拡散能力があるため多数派の意見として捉えられやすいですが、数としては少ないのでマイノリティと呼ばれます。
サイレントマジョリティ
サイレントマジョリティ(silent majority)はノイジーマイノリティの対義語で、「静かな大衆」といった意味があります。
2017年にはアイドルソングの曲名としても話題になったので、ノイジーマイノリティより聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
サイレントマジョリティは、積極的に声こそ上げないものの、数としては多数派なため、政治やマーケティングなどにおいてはとくに把握する必要がある集団です。
「マイノリティ」と対義語「マジョリティ」の具体例
ここでは、私たちの暮らしで身近なマイノリティと、対義語・マジョリティの例を解説します。
どのような場面でマイノリティとマジョリティの判別がされるのか、理解を深めてみてください。
右利きと左利き
ほとんどの人が体験したことがある多数派・少数派の区別は、右利きと左利きでしょう。
右利きはマジョリティ、左利きはマイノリティであり、はさみやドアノブ、駅改札のICタッチ部分など、生活するなかで多くのものが右利き用に作られています。
左利きの人は、学校の書道でも書きにくい思いをした経験があるかもしれません。
スポーツなど、マイノリティであるために対策が立てにくいとして「左利きが有利」とされることもありますが、基本的には不便な思いをしている左利きの人が多いです。
健常者と障がい者
身体・知能・精神においては、健常者がマジョリティ、障がい者がマイノリティです。
内閣府が発表している2021年のデータでは、日本における障がい者は964万人ほどおり少なくは感じませんが、人口の約7.6%にあたるので少数派であることは変わりません。
新設の建物はバリアフリー設計で作られることが多い一方で、階段しかない駅、障がい者雇用のない企業などもまだあり、生きにくさを強いられている障がい者はいます。
母子家庭と父子家庭
あまりマイノリティとして意識したことがない方もいると思いますが、ひとり親の世帯において、母子家庭はマジョリティ、父子家庭はマイノリティです。
2016年度の「全国ひとり親世帯等調査」(厚生労働省)によれば、ひとり親世帯の86.8%は母子家庭。
シングルマザーを支援する制度は増えていても、シングルファーザーには注目が集まっていないため、不平等な思いをする父親もいます。
異性愛者と同性愛者
「男性は女性を、女性は男性に恋愛感情や性欲を抱く」とする異性愛者がマジョリティ、同性愛者はマイノリティです。
ジェンダー差別をなくそうという声が大きくなってきた近年でも、「身近な人に同性愛者がいたら受け入れられない」という異性愛者もいます。
同性同士の結婚を認めていない国の民法や戸籍法に対し、複数の同性カップルが起こした「同性婚訴訟」も記憶に新しいです。
同性愛者など性的マイノリティにあたる人々が、学校の友人や職場の人々に自らの思いを打ち明けるには、日本ではまだ勇気がいる場合が多いでしょう。
純日本人とハーフ・クォーター
両親のうちどちらかが外国人であるハーフ、祖父母のいずれかが外国人であるクォーターも、マイノリティと言えます。対義語であるマジョリティとなるのは、純日本人です。
近年では、ハーフという呼び方は「半分」「半人前」といった意味となるために「ダブル」「ミックス」などとも呼ばれますね。
混血の人は、日本だけでなく世界的にもマイノリティとされ、周囲に理解されずに苦しんでいる人たちもいます。
「マイノリティ」と「マジョリティ」を差別的に使わないための考え
マイノリティやマジョリティは、差別的な意味合いを含むことが多いです。人に向かって「あなたはマイノリティだよ」ということはまずないでしょう。
この記事ではマイノリティとマジョリティの例を挙げてきましたが、そもそもグループ分けをして人を判断すること自体が良いこととは言えません。
マイノリティに対する理解は大切ですが、「この人はマイノリティだから」と接するのではなく、個人はひとりひとり違うのが当たり前という認識を持ちたいところです。
自分がマイノリティに当てはまる場合も、卑屈になったり、反対に弱者の立場を盾にすることなく、区別を意識せずに暮らしていくほうが精神的負担が減ります。
「マイノリティ」と対義語「マジョリティ」を理解して差別意識をなくそう
ここまで、マイノリティと対義語・マジョリティの意味や具体例などを紹介してきました。
マイノリティとマジョリティを知り、理解して受け入れることは、多様性が尊重されている昨今ではとても大切です。人間は、自分が知らないものについては拒否反応を示したり、無関心になったりすることもあります。
きちんと知ったうえで「私はこのマイノリティに関しては受け入れられない」と思うのなら、それもまた個人の意見として尊重すればよいでしょう。
不当な扱いを受けているマイノリティな人々について、まずは知るところから初めて、寄り添える部分はぜひ行動に移してみてください。