「本の自炊とはいったい何?」といった疑問をお持ちの方は多いでしょう。本における “自炊” とは、紙の本をスキャンして電子化することであり、私的利用で行う分には問題がないとされています。
「なんだか複雑で面倒くさそうな作業のイメージがある」という方もいるかと思いますが、自炊は裁断機やスキャナーがあれば誰でもできる作業です。実際の手順を一度知ってしまえばむずかしくないため、気になる方はこの機会にぜひチェックしてみてください。
本記事では、本の自炊を行うために必要なものや、具体的な手順についてまとめました。自炊や自炊代行の違法性についてもお伝えするので、不安がある方は参考にしてみてください。
本の自炊とは?
本の自炊とは、紙の本をデジタルデータに変換することです。
スキャナーを用いてすべてのページを取り込み、OCRソフト(光学文字認識ソフト)を使って文書内の文字を認識させ、PDFやePubなどのファイルフォーマットに変換します。
その際、良い画像でスキャンするために、ヨレや汚れがないか、本の状態について事前確認することが大切です。ほかに気をつけるべき点としては、著作権法に違反しないよう注意を払うことが挙げられます。
自炊するメリット
紙の本と比べると見た目や重さがないため、デジタルデータに変換することで管理しやすくなることがメリットです。限られた住居スペースにお住まいの方であれば、その分部屋のスペースを空けることができます。
また、いつでもどこでもPDFのテキスト検索やファイル名検索ができ、タブレットやPCなどさまざまなデバイスで読めるため、文書管理も場所を選びません。
著作権法に抵触しない方法に限りますが、ほかのデバイスで共有するなど転載したいときにも便利です。
自炊するデメリット
自炊作業には時間と労力がかかることがデメリットです。高品質なデジタルデータを作成するためには、専用スキャナーやソフトウェアなどの機材購入が必要となったり、スキャンする書籍の状態によっては修復・校正・クリーニングしたりなどの手間や費用が発生します。
さらに、自炊したデータについて、著作権や法的制限にも気を配らなければなりません。加えて、デジタルデータの保存やデータ紛失・破損などのリスクも存在します。
本の自炊に必要な機材
本を自炊する場合、主に4つの機材が必要です。
- スキャナー
- パソコン
- OCRソフト
- 紙の本を補強する台とクランプ
以上の機材があれば、紙の本をデジタルデータに変換できます。ただし、コストがかかるため自炊頻度や内容に合わせた適切な機材を選びましょう。
裁断機
場合によっては、本の余白を切り取り、スキャンするため平らな表面を作る裁断機が必要となることがあります。
裁断機を購入できる主な場所は、ホームセンターやオフィス用品店。手動タイプと電動タイプがあり、スキャンする数量や用途に応じて選ぶことがおすすめです。
手動タイプは1,000円程度から、電動タイプは1万円程度で購入できます。選ぶ際は「カット幅」「刃数」「裁断機は手動か電動か」の3点に注目し比較検討すると良いでしょう。
スキャナー
自炊する本の種類によって、スキャナーの役割は変わります。
画質にこだわりたい場合は高性能スキャナーが相応しく、手間を減らすためには両面同時にスキャンする機能がついたものが望ましいです。
ちなみに料金は、比較的手軽に手に入るものであれば数千円から数万円程度が相場ですが、高性能なものや大型であれば数十万円以上するものもあります。
パソコンなどの電子端末
本を自炊する際には、取り込んだデータを保存し、その後整理・編集を行うためパソコンなどの電子端末が必要になります。電子端末があれば、自炊したデータを自分が使いやすい形式(PDF、EPUBなど)にすることも可能です。
スキャンしたデータを保存するための外付けハードディスクやUSBメモリ、編集専用ソフトウェアなどもあると良いでしょう。スキャナー自体がパソコンと接続できる場合もあります。
本の自炊に必要なソフトウェア
本の自炊には、スキャナーから取り込んだデータを編集するためのソフトウェアが必要です。代表的なソフトウェアとして、「Adobe Acrobat」や「ABBYY FineReader」などがあります。
これらのソフトウェアはすでにOCR機能を備えており、スキャンした画像データから文字を認識し、編集可能なデータに変換できるので便利です。また、ページの回転やトリミング、ノイズ除去などの機能も搭載されているため、自炊したデータの品質を向上させられます。
本を自炊する基本的な手順
本を自炊する基本的な手順としては、以下の3つの手順に沿って作業を進めることが多いです。
- 本を裁断する
- 裁断後の紙をスキャン
- 電子データの取り込み
続いて、具体的な手順について確認していきましょう。
手順1:本を裁断
まず初めに、サイズにあった裁断機を使ってスキャンする部分をカットします。幅が長い場合は、カットを繰り返し行うことで綺麗に整いやすいです。裁断後は、裁断したところが裁断面となるため、ページ番号を確認しながら元通りに重ねてください。
扉・目次・挿絵のあるページなど、両面が使われているページは、それぞれ調整したあとにスキャンします。裁断後の余白は、約3〜5mm程度に仕上げることが一般的ですが、スキャナーの性能によっては、広い余白が必要となる場合があります。
自動余白検出機能などが備わったスキャナーもありますが、念のためスキャン前に余白のサイズと検出設定を確認しておくとより安心です。
手順2:裁断後の紙をスキャン
裁断が完了したら、紙をスキャンしてみましょう。スキャナーの設定によっては、裁断した本のページをダブルクリックして、プレビュー画面で表示できます。
その際、紙の向きや解像度、色数、ファイル形式などを設定します。問題なければ、スキャンを開始。高解像度でスキャンする場合、時間がかかることがあります。
スキャンが終わったら、保存するフォルダーやファイル名を指定し保存。ファイル形式は、PDF・JPEG・TIFFなどを選択できます。OCR機能があるスキャナーを利用する場合は、文字検索できるPDFファイルを作成することも可能です。
最後にスキャンしたファイルを確認し、必要なページをトリミングや回転で調整します。これで、本の自炊が完了しました。
手順3:電子データの取り込み
本の裁断が完了したら、電子データとして保存します。
その際、スキャンした日付や書類名に基づいたフォルダを用意したうえで、データ保存することがおすすめ。文字認識できるOCR機能を備えたスキャニング機器を使用すれば、保存書類から語句検索が可能となるPDFファイルを作成できます。
保存したあとは、保存しやすい形式でデータを管理し、必要に応じて整理しましょう。
以上が、本の裁断後に紙をスキャンして、電子データとして取り込む手順の概略です。スキャンの方法や手順は、使用する機器、スキャナー専用ソフトウェア、保存形式などによって異なる場合がありますが、基本的な流れは大体同じと捉えて構いません。
裁断せずに自炊する方法
自動めくり機能がついたブックスキャナーを使用すれば、本のページを傷つけることも曲げることもなく、簡単にスキャンできます。
ブックスキャナーは、2つのカメラを使って、本のページをスキャン。ボタンを押すだけで自動的にめくられ、スキャンが完了するまで繰り返します。
自動めくり機能つきブックスキャナーの料金は、その分高くなりますが、スキャン画像の自動補正やOCR機能の搭載など、多機能であることも特徴のひとつです。
本の自炊は違法にならない?
本の自炊自体は、著作権法に違反するものではありません。
しかし、自炊した電子書籍を配布、または販売すると違法になるケースがあります。無断無許可で行うことは、著作権者の権利を侵害する行為であり、法律によって厳しく罰せられる可能性があることを肝に銘じておきましょう。
私的利用に限定して、自炊した書籍を読む分には問題ありません。自分自身だけで楽しめますが、その際は他人と共有しないよう気をつける必要があります。
自炊代行は違法となるケースがあるため注意
自炊代行は、著作権法に違反する恐れがあります。
著作権法により、著作物の複製・頒布・公衆送信などは、著作権者の許諾が必要です。自炊代行により複製された電子書籍を頒布する場合は、著作権侵害に該当します。
自炊代行業者自体が、著作権者の許諾を受けていなかったり、違法入手した電子書籍を使用していたりする場合もあるでしょう。
いずれも合法的な手続きを踏んでおらず、著作権法に違反する恐れがあるので、十分に注意しなくてはなりません。
本の自炊についてよくある質問
本の自炊についてよくある質問は、以下の通りです。
「自炊した電子書籍の読み方について知りたい」
「裁断済み書籍はフリマアプリなどで販売できるのか」
「本の自炊にかかる時間は?」
上記について、順番に解説します。
自炊した電子書籍はどうやって読む?
自炊した電子書籍は一般的に、PCやタブレット、スマートフォンなどのデバイス上に電子書籍リーダーアプリをダウンロードし、それらを専用フォルダに保存することで読めます。
専用の電子書籍リーダーや読書端末を使用することもできますが、自炊した電子書籍を端末に転送する必要があるので注意してください。
電子書籍リーダーアプリに入れておけば、場所にとらわれず、好きなタイミングでいつでも手軽に本を楽しめるでしょう。
裁断済みの書籍はフリマアプリなどで販売できる?
一部のフリマアプリでは、裁断済みの書籍を出品できます。その際には、裁断の事実・元の書籍の状態・大きさ・ページ数・内容などを明記して販売するなど、誤解やトラブルが起こらないよう留意してください。
また、著作権法に抵触しないよう、正規のルートで入手した書籍を販売することが望ましいです。
本の自炊にはどのくらいの時間がかかる?
本の自炊にかかる時間は、書籍のページ数・サイズ・自炊する技術力などによって異なります。一般的には、数十〜数百ページの本を自炊する場合、約2〜3時間程度が目安です。
裁断前の書籍の状態や、スキャンする際の設定などによっても作業が進むスピードが変わるので、作業時間は多めに見積もってから取り組むと良いでしょう。
自炊は手間と時間がかかる作業
自炊は、紙の書籍をデジタル化するために必要な手間や時間がかかる作業です。
専用機材をそろえる必要があったり、スキャンに手間暇をかけたり、データ編集や変換にも時間がかかります。特に、大量の書籍を自炊する場合は、長時間にわたって作業を続けなくてはなりません。
しかし、自炊によって手に入れたデジタル書籍は、スペースを取らず携帯性に優れ、好みに編集することやバックアップを取ることが可能です。
すべて自分の手で本を自炊することで、何ものにも代えがたいオリジナルのデジタルライブラリーを持つ喜びを味わえるでしょう。