マイノリティという言葉は知っていても、どんな意味があるのか、具体的にはわからないという人は多いのではないでしょうか。
一般的な人々に比べて「少数派」を意味するのが、マイノリティです。言葉の意味を押さえるだけでも、なんとなくの意味はつかめるでしょう。
しかし、直訳した言葉の意味だけでは完全に理解したとは言い切れません。社会的な位置づけについて深く調べることで、マイノリティの定義について幅広い知識を持てるでしょう。
この記事を読むことで、マイノリティに対する取り組みがわかり理解が深められるはず。ぜひ参考にしてみてください。
マイノリティとは?
マイノリティという言葉は、テレビや雑誌、SNSなどさまざまなシーンで使われていますが、その言葉の意味をしっかり理解できているでしょうか。マイノリティは英単語で、スペルは「minority」です。
日本語に訳すと「少数」「少数派」となりますが、日本でのマイノリティの使い方はニュアンスが異なります。ほとんどの場面で「社会的少数派」のことをマイノリティと言い、英語の「minority group」が同様の意味を持ちます。
マジョリティとの違い
マイノリティを知るうえで、密接に関係しているもうひとつの言葉が「マジョリティ」。マジョリティも、聞いたことはあっても、意味までは知らないという人が多いでしょう。
マジョリティも英語で、「majority」と表記されます。英語の意味は「多数」「多数派」で、マジョリティの反対語であることがわかります。
マジョリティ(majority)のなかに含まれるメジャー(major)という単語は、聞きなれている人も多いかと思いますが、「主要な」「重要な」と言う意味を持ち、社会的に重要なグループを指します。
身近なマイノリティの具体例
マイノリティは以下のような人や特徴に使われることがあります。
- 利き手
- 貧困層
- 障がい者
- 外国人
意味がなんとなく理解できても、具体的にはどんなときに使われるのかがわかりにくいですよね。
一つひとつ詳しく見ていきましょう。
利き手
世の中には、左利きよりも右利きの人が圧倒的に多いです。小さい頃に、左利きから右利きに矯正されたという経験を持つ人もいるでしょう。
スポーツでは左利きの人が有利で重宝されますが、それは人数が少なく、攻略が困難だからこそ。右利きがマジョリティであることの表れでもあります。
生活のなかでも、はさみや包丁など右利きを前提として作られているアイテムは多いです。そろばんや書道も右利きでないとやりにくいため、昔から左利きはマイノリティだったと言えます。
今では、左利き用の商品も出てきましたが、左利きがゆえに不便に感じる人は多いです。
貧困層
社会のなかで所得が低い貧困層も、マイノリティです。
貧困の度合いは国によって大きく異なりますが、食費にお金をかけられない場合は栄養が十分に得られず、栄養失調などの問題が発生します。
ほかにも、教育や医療を必要なときに適切に利用できないといったことも、世界中で現実に起きているのです。
貧困は自らの力で抜け出すのは困難で、何世代も続きやすいと言われています。さらにほかのマイノリティを抱えている人は差別を受けやすく、就労が困難になるなどの理由で貧困になりやすい傾向にあると言えるでしょう。
障がい者
障がいや病気を抱えている人は、そうではない多数派の人から差別されることが多く、マイノリティと言えます。
世の中にある設備や仕組みは、障がいを持たない人が暮らしやすいように設計されたものが多いです。
車椅子では利用できない階段を通る建物や、音の鳴らない信号機など、障がい者にとって不自由な世の中であることが言えます。身体的・知的・精神的な障がいを持つ人は、就労など社会参加時にも差別を受けやすいことも事実です。
ハンセン病やエイズなど、病気による差別もこれまでに何度も繰り返されてきました。近年でも新型コロナウィルスにより、世界中で根拠のない差別や誹謗中傷が発生しています。
外国人
世界では、それぞれの土地でさまざまな言語が使用され、日本では日本語が使われています。ほかの国から、日本語が喋れない状態で日本に訪れると、言語的なマイノリティとなります。
日本語が分からない外国人にとっては言葉が通じない、看板に何が書いてあるのかわからないなど、不便に感じるでしょう。
近年行政サービスを利用する際は多言語に対応していたり、やさしい日本語で情報を提供したりしていますが、そのようなサービスを実施しているのは少数です。まだまだ不自由に感じる外国人が多いのが現状です。
社会的なマイノリティの具体例
マイノリティは社会のなかにも存在します。一部ですが以下にご紹介します。
- 言語的なマイノリティ
- 宗教的なマイノリティ
- 性的マイノリティ
- 民族的マイノリティ
どのようなマイノリティなのか詳しく見ていきましょう。
言語的なマイノリティ
前述しましたが、外国人にとって日本での生活は日本語に慣れていない場合が多く、言語的なマイノリティであると言えます。
外国人における言語的マイノリティのほかに、日本人同士の言語的マイノリティも存在します。
日本には標準語のほかに地方の方言や琉球語、アイヌ語などが存在します。多数の日本人が使う、いわゆる標準語とは異なる言語を使うことで、差別や偏見が起こることも少なからずあるのも事実です。
宗教的なマイノリティ
日本人にとって縁は少ないですが、宗教的なマイノリティも存在します。
NHKが2018年に全国18歳以上を対象とした調査を見ると、信仰している宗教があると答えた人が31%、ないと答えた人が62%。2008年にも同様の調査をしていますが、信仰している宗教がある人は33%、ない人は61%と、10年でほぼ変化がないことがわかります。
また、信仰している宗教は仏教が31%がもっとも多く、神道3%、キリスト教とそのほかが1%でした。
日本人の多くは信仰する宗教がないため、信仰する宗教がある人の礼拝や参拝への参加など、宗教的な行動により差別や偏見が発生することが考えられます。
性的マイノリティ
「異性を好きになるのが当たり前」「性へのありかたは男女だけ」だと考えている人が多いなか、そうではない考え方をする人を指す性的マイノリティ。セクシャルマイノリティ、性的少数者とも呼ばれます。
近年では以下アルファベットの頭文字を使いLGBTQとも呼ばれることも多くなりました。
- L(Lesbian):女性同性愛者
- G(Gay):男性同性愛者
- B(Bisexual):両性愛者
- T(Transgender):心と体の性に違和感がある人
- Q(QueerやQuestioning):性的少数者
そのほか、性を男女に分けることに違和感を覚えるXジェンダー、無性愛者のアセクシュアルなども、性的マイノリティに該当します。
日本では、戸籍上の性別が異なる2人の間のみで結婚ができると法律で定められており、同性愛者の結婚は法律上では認められないなど、社会的にさまざまな問題があります。さらに、差別や偏見などの対象になることも。
Xジェンダーやアセクシュアルなど、まだまだ知られていない性のあり方が数多くあり、すべてを理解できる人は少ないのが現状です。
民族的マイノリティ
エスニックマイノリティとも呼ばれる、日本では身近に感じることが少ないマイノリティです。
日本国内では、文化や言語の違いから、先住民族であるアイヌや琉球民族が差別を受けてきた歴史があります。明治時代以降に日本政府は同化政策を行い、独自の文化や言語を禁止したのです。今でも誤った認識から、差別や偏見が残っています。
そのほかでも、世界的に見ると、日本はアジア人として人種差別の標的にされることもあるなど、民族的マイノリティは簡単に解決できない問題であると言えるでしょう。
マイノリティが抱える課題
さまざまなマイノリティがいることがわかりましたが、マイノリティの人は以下のような課題を抱えています。
- 制度の対象外とされる
- 抑圧や人権侵害を受ける
問題が発生する理由を詳しく解説していきましょう。
制度の対象外とされる
制度が定められる際、少数派のマイノリティのことを想定していないために、対象外となる場合があります。
差別をしている感覚がなくても、マジョリティが住みやすい環境を無意識のうちに生み出しているのです。
例えば、上でも挙げたように、日本の法律では戸籍上性別の異なる2人のみが夫婦になれることになっているため、同性愛者同士の結婚は認められていません。そのほかにも、世界中でマイノリティが該当しない制度は数多く存在しています。
抑圧や人権侵害を受ける
日本国内のみならず、世界中でマイノリティへの人権侵害や抑圧は、あとを絶ちません。
第2次世界対戦中のナチスドイツによるユダヤ人大量虐殺も、人種差別により引き起こされた残忍な記録です。また、同性同士の性行為が違法で、重い刑を科される国もあります。
身近な場所でも、たとえば、職場の同僚が同性愛者だとわかった途端に無視やいじめを受けるということも少なくありません。マイノリティに対し、周囲がどれだけ理解して受け入れるかが重要です。
マイノリティ問題を解決する2つの方法
マイノリティにはいくつもの課題がありますが、それを解決に導くには以下の方法があります。
- 認識のギャップを理解する
- 知識を正しく身につける
正しく認識し、問題解決に役立てましょう。
認識のギャップを理解する
マイノリティの考え方をすべて理解しようとしても、それは難しいことです。まずは認識のギャップがあることを理解することが大切。
世代で考え方が違うジェネレーションギャップがあるように、性的マイノリティのなかでも認識のずれがあります。
制服を例にすると、女子はスカート、男子はズボンと決められていますよね。最近では、女子でもズボン、男子でもスカートを選べる学校が増えてきました。
心と体の性に違和感があるトランスジェンダーにとっては、そのシステムにより自分を受け入れられたと感じ、問題解決につながることもあるでしょう。
一方、同性愛者にとっては性別と性自認は一致しているため、今までの男女別制服にもそもそも違和感はありません。むしろ、的外れな提案がストレスになることも。
まずは、マイノリティとマジョリティの間にはギャップがある場合がある、ということを知ることが重要です。
知識を正しく身につける
マイノリティは、ひと一言で片づけられないほど種類が多く、それぞれに抱える問題も異なります。
マイノリティは少数派で表に出しにくいために、これまで隠されてきた部分も多くありました。しかし近年では、さまざまなマイノリティが理解されつつあり、問題点も徐々に認識されています。表面だけの誤った知識では、根本的な問題解決にはなりません。
それぞれのマイノリティへの正しい知識を個々が身に着けることが、課題解決への大きな一歩となるでしょう。
マイノリティへの理解はSDGsにも関係している
マイノリティを正しく理解することは、一見まったく関係ないSDGsの課題解決にも大きく貢献する重要なポイントです。
SDGsは「Sustainable Development Goals」の略で、持続可能な開発目標を意味しています。より良い世界を築くために、2030年までに達成すべき17の目標が記されており、そのなかでも以下の目標とマイノリティが関係があるのでチェックしましょう。
目標1:貧困をなくそう
貧困こそがマイノリティであり、それぞれの国の貧困を解決することが、より良い世界を作るためには欠かせないとされています。
目標10:人や国の不平等を失くそう
目標10では、
2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、経済的地位やその他の状況にかかわらず、すべての人々に社会的・経済的・政治的に排除されず参画できる力を与え、その参画を推進する。
としており、マイノリティにも深く関連しています。
マイノリティの意味を知って課題を解決しよう
マイノリティは少数派ですが、生活している身のまわりにも少なからず存在します。それは小さなことから世界の問題になるほどのものまでさまざまです。近年話題のSDGsにも関係するほど、マイノリティはクローズアップされています。
正確な知識を持たずにマイノリティの人達と接すると、自分は意識していなくてもいつの間にかマイノリティの人を傷付けてしまうこともあるでしょう。
そんなことが起きないよう、まずはマイノリティへの正しい知識を身につけて、すべての人にとってより良い世界を築きたいですね。