ごみを減らすための取り組み「リデュース・リユース・リサイクル(3R)」。言葉を聞いたことはあっても、それぞれのきちんとした意味や、具体的に何をしたら良いのかまでは、知らない人も多いのではないでしょうか。
リデュース(削減)・リユース(再使用)・リサイクル(再資源化)は、それぞれ意味が違い、私たちができる取り組み内容も変わります。
3Rの正しい意味やメリットを知らずにいると、良かれと思ってやっていることが、実は環境や未来の人々のためになっていないかもしれません。
この記事では、3Rのうちの「リユース」について、意味や具体例、必要となった背景やメリットなどをまとめて紹介します。最後まで読めば、ひとつのものを大切に使い、結果的にごみを減らせる方法が分かるので、ぜひ読んでみてください。
リユースとは
リユース(Reuse)とは、英語で「再使用する」という意味の言葉です。
ごみや不用品となるものを捨てずに別の用途で使う行為や、再使用するための修理・買取販売といったサービスがリユースにあたります。
ものを長く使えるのであれば、個人が同じものを再使用しても、ほかの人にゆずって複数の人たちで長期的に使っても構いません。捨てるはずのものをリユースすることで、大量生産を抑えられ、ごみの量も削減できます。
リユースの具体例
リユース=再使用と分かったところで、具体的にどのようなものがリユース品・リユースのサービスにあたるのでしょうか。
ここでは、私たちのまわりで行われている身近なリユースの例をいくつか紹介します。
リユース品
まずは、リユース品の例を見てみましょう。誰しも一度は使ったことがあるはずですよ。
お下がり(リユース衣服)
リユースという言葉が注目されるはるかに前から、日本で伝統的に行われてきた文化が「お下がり」です。
兄弟や親戚はもちろん、近隣に同じような世代の子どもがいれば、数回しか着ない式典用の洋服や、ベビーカーなどをお下がりとしてゆずります。
子どもでも取り組めるお下がりは、世界にも浸透しつつある日本特有の「もったいない」の文化が生んだリユース方法です。
詰め替え品
洗剤やシャンプー、調味料などの詰め替え品もリユース品と言えます。
詰め替え品を使うことで何度も容器を買わなくて済むうえ、プラスチックごみが減ることで焼却時の二酸化炭素を削減することが可能です。
地球環境を大気汚染から守り、お財布にも優しい詰め替え品は、誰でも取り組みやすいリユースのひとつと言えます。
リターナブルびん
リターナブルびんとは、飲み終わったジュースやビールのびんを業者が回収・洗浄・消毒し、再び中身を詰めて販売するものです。
リターナブル(returnable)は「回転可能な」「返却できる」といった意味をもちます。「リユース瓶」や「生き瓶」とも言い、配達される牛乳や一升瓶など、昔から利用されてきました。
しかしリターナブルびんを通常のごみ収集に出してしまう人がおり、びんの回収ができずにリユースサイクルが途絶えることが問題にもなっています。
リユース家電
テレビや冷蔵庫、洗濯機といった家電もリユースすることが可能です。
不用になった家電を業者に買取・回収してもらったり、新しい製品に買い替えたいときに家電量販店で下取りしてもらったりできます。
回収された家電のうち、使えるものは洗浄・メンテナンスして再販売され、修理しても使えないものは分解して使える部品を取り出して再使用する仕組みです。
リユースの取り組み
リユース品は身近なところで売り買いされており、私たち個人も手に入れられます。
次はリユースへの取り組みをいくつか紹介するので、ぜひ利用してみてください。
フリマ・バザー
フリマ(フリーマーケット)やバザーは、地域の人が不用になったものを持ち寄り、定価よりも安い値段で再販売することで、別の人の手にわたる機会を作る催しです。
フリマとバザーは似ていますが、フリマの収益は出品した個人に入り、バザーの収益は開催元の団体に入るという点で異なります。
フリマ・バザーは、リユース活動であるうえにショッピングする楽しみもあり、スマホが普及した現代では「メルカリ」「ラクマ」などのフリマアプリもできました。
わざわざ会場まで足を運ばなくて良い、1品から出品できるなどのメリットがあるフリマアプリは、誰もが気軽に使えるコンテンツとして一定の需要を獲得しています。
ネットオークション
ネットオークション(インターネットオークション)とは、オンライン上で行う競売取引のひとつです。商品が出品されると複数の買い手が希望額を出していき、最高額を提示した人が落札(買う権利の入手)できます。
日本では「ヤフオク!」「楽天オークション」などのオークションサイトが有名で、不用品やゲームセンターの景品(プライズ品)、プレミア価格のついた昔の商品などが購入可能です。
リユース業者
リユース業者(買取業者)は、売り手と買い手をつなぐ仲介業を行う会社です。
ブランド品や着物、宝石や骨董品など、素人では価値が分かりにくいものを鑑定したり、個人では買い手を探しにくいものを買取り、販売先を見つけたりします。
漫画数冊などを売るならリサイクルショップ、遺品整理でたくさんのものを処分したい場合は買取業者など、用途にあわせてリユース業者を使い分けるとよいでしょう。
ちなみにブックオフなどのいわゆる「リサイクルショップ」は、メンテナンスなどはしても分解や加工はしないため、意味を考えると「リユースショップ」と呼ぶのが正しいです。
リユースと似た言葉の違いとは
ごみを減らすための「3R」には、リユースのほかに「リデュース」「リサイクル」があります。ここではリユースとの違いを簡単に解説します。
リデュース
リデュース(Reduce)とは、そもそものごみ・不用品自体を減らそうとする取り組みを指します。
リデュースはものの購入時に必要な考え方で、捨てない方法を考えるリユース、捨てたものをどう使うか考えるリサイクルよりも優先度が高いです。
具体例としては、レジ袋をもらわずにエコバックを使ったり、たまにしか着ない結婚式用の服を買わずにレンタルしたりすることが当てはまります。
リデュースはものを手に入れる段階での取り組みですが、詰め替え品の利用や、ものを修理して長く使うなど、リユース品の利用が結果としてリデュースになることも多いです。
リサイクル
リサイクル(Recycle)とは、ごみや廃棄物から使える部分を取り出し、原材料やエネルギーなどの再資源に変えて利用することです。
衣服・ミックスペーパーなどを回収して糸や再生紙にしたり、ペットボトルから繊維を取り出して洋服にしたりします。
いらなくなったものをほぼそのままの状態で再使用するリユースとは違いのに対し、リサイクルは不用品を分解・化学融解して別のものに作り変えるため、専門業者が必要です。
個人で取り組めるリデュース・リユースとは違い、加工や分解をするリサイクルでは、私たちにできるのはごみ・資源の分別までとなります。
まずごみを減らし(リデュース)、いらなくなったらほかで使えないか、欲しい人はいないか検討し(リユース)、分別・融解して再利用する(リサイクル)という流れです。
リユースが必要になった背景とは
リユースや3Rへの取り組みが必要なのは、現在の地球環境にさまざまな問題が発生しているからです。
ここでは、ごみを減らす取り組みが必要になった背景を解説します。
埋め立て処分場の容量不足
リユースもリサイクルもできないごみは、焼却施設で燃やしたあと、最終処分場(埋め立て場)で処分するしかありません。
環境省は、2020年度のデータ上、ごみの最終処分場は残り22.4年分だと発表しています。(参考:一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和2年度)について|環境省)
このままだと、2043年前後には焼却したごみを埋める場所がなくなるのです。山を切り開けば自然破壊につながるため、安易に処分場を増やすこともむずかしくなっています。
しかし3Rをはじめとする取り組みのおかげで、前年よりもごみの総排出量が減るとともに、リサイクル率も上がりました。
最終処分場の残容量も2019年度:21.4年分→2020年度:22.4年分とわずかに増えているので、このままひとりひとりが3Rを心がけ、残りの年数を伸ばすことが大切です。
温室効果ガスの増加
ごみを焼却する際には、温室効果がある二酸化炭素が発生します。二酸化炭素の増加は地球温暖化の原因となり、海面上昇や異常気象などの問題が起きて危険です。
原料が植物である生ごみなどはもともと自然界にあった二酸化炭素とみなせますが、プラスチックを燃やして出た二酸化炭素は、人間が生み出した余分な物質と言えるでしょう。
石油の枯渇
森林・水資源と同じく、プラスチックの原料である石油も限りある資源です。プラスチック製品が世界的に普及した結果、どんどん採掘可能な石油の量は減っています。
石油があと何年採れるかは英国のBP社が算出しており、2021年時点の発表では残り53.5年分だそうです。(参考:世界の原油埋蔵量、産油量、可採年数の推移|ENEOS)
近年生まれた子どもが還暦になる前には石油がなくなっているかも知れないと考えると、使い捨てで一見便利なプラスチック容器などの利用も、できる限り控える必要があります。
リユースのメリット
私たちひとりひとりが積極的にリユースに取り組むことは、地球環境や人々の暮らしにとってメリットがあります。
ここでは主なリユースのメリットを紹介するので、ものを捨てようとするときにぜひ意識してみてください。
製品の使用年数が延びる
ものをリユースして長く使えば、当然製品の使用年数が延びます。
中古品を使う人が増えて製品の使用年数が延びれば、その分新製品を作る量も減るため、生産のためのエネルギー・原材料などを抑えることが可能です。リユースに取り組むことで、資源を守り環境への負荷を減らせるとともに、企業の生産コストも下げられます。
近年は「断捨離」「ミニマリスト(できる限りものを持たずに暮らす人)」などの言葉もメジャーになりましたが、ものを手離すときには極力リユースを心がけることが大切です。
一度ものを減らせば、捨てずに残したものを長く使えるため、「持たない暮らし」は結果としてリデュースにつながります。
二酸化炭素排出量を減らせる
リユース品を使って廃棄物を減らせれば、焼却するごみの量が減り、二酸化炭素の排出量を削減できます。
二酸化炭素排出量を削減できれば地球温暖化の進行が遅れるため、リユース品の利用は自然環境や人々の暮らしを守ることにつながるのです。
エネルギーやコストが少なくて済む
ごみを再資源化するのに大型施設や大量のエネルギーが必要なリサイクルと違い、不用品を加工せずに使うリユースは、少ないコストやエネルギーで行うことが可能です。
リユースによってごみの量が減れば、ごみの回収作業から処分までのコストもカットできるので、税金をほかの問題に使えます。
SDGs達成の助けになる
リユースに取り組むことは、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の達成にもつながります。
17個定められているゴールのうち、リユースは以下との関連性が高いです。
- 目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
- 目標12「つくる責任 つかう責任」
- 目標13「気候変動に具体的な対策を」
限りある資源を大切にして地球環境を守るには、3Rを定着させてごみを減らすこと、リユース品のようにものを長く使って過剰生産を抑えることが重要です。
リユースを考えるときの注意点
ここまでリユースのメリットを解説してきましたが、デメリットまではいかずとも、リユースを考える際に注意したいことがいくつかあります。
「何も考えずにとにかくリユースすればいい」というわけではないので、リユース品と新品を上手に使い分けることが大事です。
省エネ性能なら新製品も有効
掃除機などの電化製品は、昔からあるものを修理してひたすら使い続けるよりも、近年発売された商品のほうがエコ対応なケースもあります。
昔のものより省エネ性能が高ければ、発電によるエネルギーが抑えられ、二酸化炭素の排出量も減るでしょう。
修理が必要なタイミングなどで、このまま手持ちの製品を使い続けるのか、エコ性能の高い新品または今より型が新しい中古品を使うのかを考えることが大切です。
経済循環も考える
リユース品が今よりもっと普及すると、企業などが新製品を出しても売れなくなり、経済循環が悪くなるのではという意見もあります。
しかし、リユース業界や中古品販売企業などの流通は増えるため、総合的に考えるととくに悪影響はないという声もあり、意見が分かれているのが現状です。
身の回りをすべてリユース品で揃えることもむずかしく、気負うと取り組むのが億劫になるので、新製品を買うと決めたら「これはこれで経済が回るな」と前向きに捉えてください。
リユースとは何かを知って今あるものを大事に使おう
ここまでリユースについて、言葉の意味や具体例、必要になった背景やメリットを紹介してきました。
ものを長く使うためのリユースは、地球環境を守ることはもちろん、エネルギーやコストの面でも役立つ取り組みです。何かを捨てようとするとき、フリマアプリや買取業者を利用できないか、再使用できないかと考えられるようになると素敵ですね。
今いる子どもの未来の暮らしを守るためにも、リユース単体ではなくリデュースやリサイクルもあわせて、できることから少しずつ取り組んでみてください。